岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ふたりだけの絆で結ばれた父子の旅立ちの物語

2021年05月13日

旅立つ息子へ

©2020 Spiro Films LTD.

【出演】シャイ・アヴィヴィ、ノアム・インベル、
【監督】ニル・ベルグマン

閉ざした自分と閉ざされていた息子が旅の先で見つけたもの

イスラエルのとある田舎町。アハロン(シャイ・アヴィヴィ)と息子のウリ(ノアム・インベル)は、そこで穏やかな日常を送っていた。

ウリは外見は成人だが、"自閉症スペクトラム"を抱え、ふいに制御が効かなくなり、幼い子どものような行動に走る。アハロンはそれを受け入れ親子の独自のルールを作り、深い絆のもと、その関係は何の支障もなく良好な暮らしぶりには見える。

ある日、別居中の妻タマラがふたりを訪ね、アハロンにある決断を迫る。

ほぼ無職で定収入のないアハロンは、養育不適合と判断され、タマラのすすめる全寮制の支援施設へのウリの入所が、裁判所によって決定されてしまった。

アハロンの暗く沈んだ表情は、それに対するやるかたない不満と不安の表れだった。

そして、入所の日。施設へ向かう乗換駅で、父との別れを悟ったウリはパニックを起こしてしまう。途方に暮れたアハロンはある決意のもと無謀な行動にでる。

監督のルニ・ベルグマンは、1969年イスラエル・エルサレム生まれ。長編第1作の『ブロークン・ウィング』(02)で東京国際映画祭サクラグランプリを受賞。続く第2作『僕の心の奥の方法』(10)でも、同賞に輝き、日本との関係も深い。『旅立つ息子へ』は、自らの父と弟をモデルにしており、その劇中に繰り返し登場する、ウリが大好きな映画、チャップリンの『キッド』は弟が好んで観ていた映画であり、そこに描かれている、血縁を超えた"絆"は、本作に貫かれているテーマでもある。

障害者を見つめる視線は誠実で、綺麗事に済ませることなく、生理的=性的な問題も隠すことなく描いている。

無謀な逃避行の旅で、アハロンは過去に触れ、自らを見つめ直す機会を得ると共に、ウリの成長の過程を目撃することになる。

息子の自立を見つめる父の、切なくも愛おしい物語に心揺さぶられる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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