岐阜新聞 映画部

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夫の暴力から逃れた母娘が自ら家を建てる

2021年04月29日

サンドラの小さな家

©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

【出演】クレア・ダン、ハリエット・ウォルター、コンリース・ヒル
【監督】フィリダ・ロイド

無常の世の中でも声を上げれば手を伸ばせば

アイルランド・ダブリンに暮らすサンドラ(クレア・ダン)は、幼い2人の娘に囲まれ、スキンシップも交えたその暮らしぶりは、幸せそうに見える。そこに父親ゲイリーが現れることで、その場の雰囲気が一気に変わるのがわかる。

『サンドラの小さな家』は、父親のDVから逃れ、自立して生きようとする母娘を描いた映画である。

家を出たサンドラは、暴力からは逃れたが、そこに待ち受けていたのは、仕事のかけ持ちと、まだ、手のかかる子どもたちを育て、時間に追われる日々だった。加えて、別居した夫とは娘たちの親権を争う調停が続いていた。

サンドラにとって重要課題は住まいの確保だった。公営住宅は先の見えない順番待ちの状態。代わりに充てがわれたホテル生活は、部屋代の自己負担や、一般客とのすみ分けを強要される辛苦が重なる。ある日、娘たちとの会話から、自らの手で家を建てるというヒントを得る。

ネット検索で見つけた"DIY"(=自分で家を建てよう)は、一見、安易に見えたりするが、それが落とし穴、材料の調達だけではどうにもならず、工具の必要性が浮かび上がるし、何より土地探しが最大の難関として立ちはだかる。

公共の保留地の提供や、建築資金の貸付を役所に直訴するが、門前払いに近い形であしらわれる。遊んでいる土地の有効活用、終わりの見えない援助よりも、目的を持ったお金の使い方を主張するサンドラの言い分は、的を得た正当なものに思えるが、こんな時、頼りにらないのがお役所仕事である。これまでも幾度か映画にもよく似た話が登場する。実際に体験された方もいるのでは?

ハウスキーパーの勤先のペギーからは土地と資金の提供を受け、大工のエイドを半ば強引に巻き込む。幾つもの困難に負けない"母は強い"を実践するサンドラの生き方は案外図太い。

クレア・ダンは友人のエピソードをもとに自ら脚本を手がけた。感動的なリアリティはそこから生まれている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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