岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

違う階層で生きる女性の軽やかな進化の物語

2021年04月27日

あのこは貴族

©山内マリコ/集英社・「あのこは貴族」製作委員会

【出演】門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ、佐戸井けん太、篠原ゆき子、石橋けい、山中崇、高橋ひとみ、津嘉山正種、銀粉蝶
【監督・脚本】岨手由貴子

都会の息苦しさよりも家の重圧の方が重い

東京、夜、走るタクシー、後部座席にいる無表情な女性を照らす街の灯。虚無感漂う風景。

ホテルの一角にある高級料理店では榛原家の新年の会食の宴が開かれている。話題になるのは不在の華子のこと。

エントランスに降り立つのが華子(門脇麦)。手慣れた様子で家族の待つ、座敷に案内される。

裕福な家に生まれ、なに不自由なく育った華子は、結婚を考えていた恋人に振られる。理由ものみこめないまま告げられた別れだったが、華子には狼狽えるような素振りはない。20代後半になろうとする華子は、"結婚=幸せ"を信じて疑わない。

富山に生まれた味岡美希(水原希子)は、少し背伸びと自覚していたが、東京の名門大学入学の夢を叶えた。

学校には幼稚舎からエスカレート式に進学するエリート組と、美希のように受験を勝ち抜いたが、所謂、庶民組という棲み分けが存在した。

そんな時、実家の経済状態の悪化により、学費の仕送りはなくなる。夜の世界で働くという道を選択せざるを得なかったが、それも続かず大学は中退。OLとして新たな生き方を模索するも、仕事にやりがいを感じることもできず、東京にしがみつく意味すら見失っていた。

『あのこは貴族』は、境遇の違う華子と美希が出会うことにより、それぞれが新境地へと導かれる成長物語である。

結婚にこだわる華子は、家から勧められた縁談に従い、さらに上流の家の跡取、弁護士の青木幸一郎(高良健吾)と結ばれる。

華子や幸一郎がいる貴族的世界と美希のいる庶民世界には壁が存在するわけでもなく、関係性は複雑に交錯する。

華子と美希を演じるふたりのキャスティングは一見、逆に感じられるが、これは演出の意図であり成功している。しかし、古風な家柄の象徴的な姿など、遠く離れた世界観でしか観ることができないという不思議な息苦しさは、最後まで払拭されることはない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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