岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

自ら人生を切り開き階段を上っていく。宝石のような作品。

2021年04月26日

あのこは貴族

©山内マリコ/集英社・「あのこは貴族」製作委員会

【出演】門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ、佐戸井けん太、篠原ゆき子、石橋けい、山中崇、高橋ひとみ、津嘉山正種、銀粉蝶
【監督・脚本】岨手由貴子

本当のセレブ階級の世界を、垣間見ることができる

私の映画鑑賞の基準は、監督・出演俳優・仲間の評価・世間の話題の順である。どれにも当てはまらない場合は、洋画では”Rotten Tomatoes”のFRESH割合、邦画では”キネ旬Review”の星取りが鑑賞動機となる。

名前も読めない過去作も知らない監督の『あのこは貴族』という初耳の作品が、”キネ旬Review”で、☆5つ2人・☆4つ1人と大絶賛!。居ても立っても居られず、すぐに映画館へ駆け付けた。

ハードルを相当上げて観たのだが、それを遥かに上回る傑作で、本当のセレブの世界を垣間見ることが出来た稀有の作品である。

鑑賞後に調べてわかったのは、岨手(そで) 由貴子監督が、新藤兼人賞金賞受賞者で、脱東京(金沢在住)の新進気鋭の監督だということ。自分の不明を恥じるしかない。

地方に住んでいると分からないが、東京には格差社会とは全く違うレベルで、セレブ階級が存在しているようだ。

松濤に住む開業医の娘・華子(門脇麦)は、家事手伝いという「職業」。お金の心配は一切なく、決められた仕来たりやルールに従って優雅に暮らしている。

もう一人の主人公・富山出身の美紀(水原希子)は、勉強して試験で慶大に入学するも、家の都合でアルバイトを余儀なくされた上、結局は退学してしまう。

映画は、セレブ階級(現代の貴族)と庶民階級が交わることはほとんどなく、相手の世界の暮らしは想像すらできないという厳然たる事実を描いていく。この2人が、江戸時代からの名家の出の弁護士・幸一郎(高良健吾)を通じて出会い、それぞれが互いの階級の中での不自由さと窮屈さを感じ取って、自ら人生を切り開き階段を上っていく。

門脇麦と水原希子の絶妙な配役が素晴らしく、2人の生き生きとした伸びやかさもあって、映画に気品を与えている。演出も、はしゃがず騒がず落ち着いており、わかりやすくて見やすい。宝石のような作品である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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