岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

そこに行かないと見られない本場の舞台が、圧倒的な映像で迫ってくる

2021年04月20日

キンキーブーツ

©Matt Crockett

【出演】ローラ役:マット・ヘンリー、チャーリー・プライス役:キリアン・ドネリー、ローレン役:ナタリー・マックイーン、ドン役:ショーン・ニーダム、ニコラ役:コーデリア・ファーンワース、ジョージ役:アントニー・リード
【脚本】ハーヴェイ・ファイアスタイン
【音楽/作詞】シンディ・ローパー

予想をはるかに上回る華やかなダンスや歌に堪能

 生で観たいくつかのミュージカル。四季の「ウエストサイド物語」、宮本亜門・藤井隆の「ボーイズ・タイム」、ザ・コンボイ・ショー「新・タイムトンネル」、三谷幸喜「オケピ!」。生の舞台でしか味わえない一体感や臨場感は最高の興奮で、未だに身体の中でリズムが刻まれているような気がしてくる。

 岐阜CINEXで観た松竹ブロードウェイシネマ「キンキーブーツ」。潰れかけた靴屋を、ドラァグクイーン用の靴というニッチな分野で再生させるお話し。

 生にはかなわない事を承知の上だが、そこに行かないと見られない本場の舞台を、プロフェッショナルなカメラと編集テクニックで、あたかもそこにいるかのように魅せてくれる。予想をはるかに上回る華やかなダンスや歌、ヒトの多様性を認めようというシンプルだけど奥の深い物語は、圧倒的な映像で迫ってくる。

 最後列の席に座った私は、自然と身体が揺れてきて足は静かにステップを踏む。

 生の舞台は定点的位置からの鑑賞という制約があり、どうしても舞台を見る角度や距離によって印象が違ってくる。しかし映像となると、様々な位置から撮られた複数のカメラにより、誰もが特等席にいるような感じになる。デメリットがメリットに転ずる。

 本公演は、2018年のUK版。観客の笑い声や拍手・歓声はこの映像を盛り上げ、時おりインサートされる熱気に溢れた会場の様子も、このミュージカルの魅力を倍加させる。

 物語を一時も途切れさせないスピーディーで軽やかな舞台転換も、それ自体が素晴らしいパフォーマンスだ。

もちろん主演のチャーリーとローラの歌唱力と存在感は圧倒的、助演陣ではコミカルなお芝居のローレンをはじめみんな素晴らしい。

名曲揃いのナンバーだが、中でもチャーリーとローラが「父さんの望んだ自慢の息子じゃない」と歌う「Not My Father's Son」は圧巻だ。

最高のミュージカルである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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