岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

異文化衝突の化学反応から生まれるほっこり人情劇

2021年04月19日

世界で一番しあわせな食堂

©Marianna Films

【出演】アンナ=マイヤ・トゥオッコ、チュー・パック・ホング、カリ・ヴァーナネン、ルーカス・スアン、ヴェサ=マッティ・ロイリ
【監督】ミカ・カウリスマキ

トナカイでも薬膳でも美味しい食事は人を幸せにする

 舞台となるのはフィンランドの最北部に位置する“ラップランド"地方の小さな村。ラップランドはスウェーデン、ノルウェー、ロシアと国境を、そして南端ではバルト海にも接している。広大な亜寒帯の荒野が広がる…ぶっちゃけて言えば過疎地である。スキーリゾートや沈まない太陽=白夜、オーロラなどの自然観光がめぼしい産業源となっている。ロヴァニエミには"サンタクロースの村“があり、シーズン限定ではなく、1年中サンタクロースに会えることを売りにしている。

 そこにやって来るのが東洋人=中国人の親子。村に唯一のレストランに普通の観光客として迎え入れられる。父親のチェン(チュー・パック・ホング)には、人探しという目的があり、たどたどしい英語で"フォントロン"を知らないか?と、店中のテーブルをまわり、ひとりひとりの客に尋ねるが手がかりはない。息子のニュニョはスマホゲームを手放そうとはしない。

 疲れてテーブルで寝てしまった親子を見かね、店の女主人のルシカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)はホテル替わりに空部屋を提供する。

 フィンランドは国連が発表する「世界幸福度ランキング」で、2018年から3年連続で1位を獲得している。幸福な国と言えば、ブータンでは?と、思い込んでいたのだが、どうもそれは別基準らしい。社会保障が充実し、ゆとりある働き方をする国民性。映画の主要な場であるルシカのレストランに集うのは老人たちだが、愚痴はこぼしても、生活自体に不満があるようには見えない。謎の中国人親子にも至って寛容、親切である。

 チェンは店にやって来る中国人団体客に、料理人の凄腕をふるい、店の窮地を救う、どころか、観光地の目玉レストランに成長させてしまう。

 監督のミカ・カウリスマキは弟のアキ同様、独特の空気感を漂わせた人間模様を描くのが上手い。異文化の衝突で生まれる奇跡の化学反応には、ほっこりさせられる。

 個人的には講釈過多の料理人は敬遠したい…。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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