岐阜新聞 映画部

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ミカ・カウリスマキ監督の、ほのぼのとしてゆるくて優しい映画

2021年04月16日

世界で一番しあわせな食堂

©Marianna Films

【出演】アンナ=マイヤ・トゥオッコ、チュー・パック・ホング、カリ・ヴァーナネン、ルーカス・スアン、ヴェサ=マッティ・ロイリ
【監督】ミカ・カウリスマキ

イギリスはフィンランドの次に料理がまずい?

 本作の舞台は、スカンジナビア半島北部ラップランド地方の、手つかずの自然が残るフィンランドの小さな村である。終わりのない白夜の短い夏の季節は、安らぎを感じる北極圏の大自然が、見渡す限りどこまでも広がる緑の季節でもある。

 そんな環境の中で食べる食事は、何を喰っても旨いだろうと思うのは大間違い。シルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)が経営する食堂で出されるメニューは、ソーセージが中心の空腹を満たすためだけみたいな料理だ。

 ちなみに2005年フランスのシラク大統領(当時)が、ロシア訪問中に「イギリスはフィンランドの次に料理がまずい。欧州の農業にした事といえば狂牛病だけだ」とイギリスを皮肉って物議を呼んだことがある。フィンランドにとってはとんだとばっちりだが、フィンランド料理は世界で一番まずい?とレッテルを貼られたようなものだ。

 そんな食堂に、恩人を探している中国人料理人チェン(チュー・パック・ホング)とその息子がやって来る。

 世界三大料理のひとつで何千年もの歴史がある中華料理には、「薬食同源」という言葉がある。“命は食にあり、食誤れば病いたり、食正しければ病自ずと癒える”という意味だ。

 映画はシルカが、チェンの恩人のフォントロンという人物を探す代わりに、店を手伝って欲しいと頼むのが前半のハイライトだが、後半あっさりと結論が出てしまう。チェンの息子がトナカイを追っかけて森の中に迷い込んでしまうシーンも、ヒヤヒヤする間もなく見つかる。

 こういう見ていて楽な展開は、むしろ私は好きである。殺伐とした映画や、怒りのやり場もない社会派映画も好きだが、ミカ・カウリスマキ監督だからこそ出来る、ほのぼのとしてゆるくて優しい映画なのだ。

 薬膳の中華料理を食べると、便通がよくなり持病も治り生理痛も解消される。その万能感にはいささか鼻白む部分もあるが、異文化をリスペクトする国民性は羨ましい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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