岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品秘密への招待状 B! 2人の女性の逃れられない因縁、戸惑いや苦悩を描いた映画 2021年04月15日 秘密への招待状 © ATW DISTRO, LLC 2019 【出演】ジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ、ビリー・クラダップ、アビー・クイン 【監督】バート・フレインドリッチ ミステリアスな展開と、意外な事実の暴露 本作は、やり手の女性実業家で億万長者の富豪であるテレサ(ジュリアン・ムーア)と、インドで孤児たちの施設を運営するイザベル(ミシェル・ウィリアムズ)との逃れられない因縁、それに関する戸惑いや苦悩、子どもや孤児たちとの絆を描いた映画だ。 お話のきっかけは、テレサがイザベルを名指しし「孤児院へ200万ドル寄付してやるから、ニューヨークへ直接会いに来い」と、一方的に条件を付けることから始まる。 アメリカの富豪は、富を独占して私財を蓄積する見返りに、慈善事業に多額の寄付をするという偽善的な文化がある。キリスト教では収入の10分の1を献金するという「什一献金」というのがあるそうだが、それは建前で、ヨーロッパ諸国の「公共性のある事業には、税金を徴収し補助金を交付する」という制度でなく、「公共性のある事業に寄付をすれば、税制上所得控除を認める」ということであり、ようするにお金の経路が違うだけである。 イザベルが、「とっとと200万ドルくれやがれ」と思っているのは、自然な感情であり、富の再配分からいっても当然なのである。 物語は、鍵となるテレサの娘グレイス(アビー・クイン)が、夫オスカー(ビリー・クラダップ)の連れ子であるという設定だが、作劇上の無理矢理感は違和感いっぱいだ。ご都合主義によるこじつけで、嘘っぽさは否めない。 その後はミステリアスな展開と、意外な事実の暴露で、映画は面白く進んでいく。二大女優の名演は、母性の発露や傷み、後悔などで存分に発揮され、強引なストーリーを中和し感動の方向に向かわせる。 スサンネ・ピア監督のデンマーク映画『アフター・ウェディング』(2007年)のリメイクだが、私はそんなに面白いと思わなかった作品の上、主人公2人が男性から女性に代わっていて、無理筋の話になってしまった。 『秘密への招待状』は悪い作品ではないのだが、作為が目立つのが残念だった。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 91% 観たい! (10)検討する (1) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2020年08月05日 / 大津アレックスシネマ(滋賀県) 琵琶湖畔にある絶景をロビーから満喫できる映画館 2018年06月06日 / シアターシエマ(佐賀県) 飲屋街にある閉館した映画館が意外な姿となって甦る 2020年05月27日 / 舞鶴八千代館(京都府) 日本海の港町で映画の灯を守り続ける映画館 more
ミステリアスな展開と、意外な事実の暴露
本作は、やり手の女性実業家で億万長者の富豪であるテレサ(ジュリアン・ムーア)と、インドで孤児たちの施設を運営するイザベル(ミシェル・ウィリアムズ)との逃れられない因縁、それに関する戸惑いや苦悩、子どもや孤児たちとの絆を描いた映画だ。
お話のきっかけは、テレサがイザベルを名指しし「孤児院へ200万ドル寄付してやるから、ニューヨークへ直接会いに来い」と、一方的に条件を付けることから始まる。
アメリカの富豪は、富を独占して私財を蓄積する見返りに、慈善事業に多額の寄付をするという偽善的な文化がある。キリスト教では収入の10分の1を献金するという「什一献金」というのがあるそうだが、それは建前で、ヨーロッパ諸国の「公共性のある事業には、税金を徴収し補助金を交付する」という制度でなく、「公共性のある事業に寄付をすれば、税制上所得控除を認める」ということであり、ようするにお金の経路が違うだけである。
イザベルが、「とっとと200万ドルくれやがれ」と思っているのは、自然な感情であり、富の再配分からいっても当然なのである。
物語は、鍵となるテレサの娘グレイス(アビー・クイン)が、夫オスカー(ビリー・クラダップ)の連れ子であるという設定だが、作劇上の無理矢理感は違和感いっぱいだ。ご都合主義によるこじつけで、嘘っぽさは否めない。
その後はミステリアスな展開と、意外な事実の暴露で、映画は面白く進んでいく。二大女優の名演は、母性の発露や傷み、後悔などで存分に発揮され、強引なストーリーを中和し感動の方向に向かわせる。
スサンネ・ピア監督のデンマーク映画『アフター・ウェディング』(2007年)のリメイクだが、私はそんなに面白いと思わなかった作品の上、主人公2人が男性から女性に代わっていて、無理筋の話になってしまった。
『秘密への招待状』は悪い作品ではないのだが、作為が目立つのが残念だった。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。