岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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思春期の少女の心の揺れを繊細に描いた秀作

2021年04月12日

夏時間

©2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED

【出演】チェ・ジョンウン、パク・スンジュン、ヤン・フンジュ、パク・ヒョニョン、 キム・サンドン
【監督・脚本】ユン・ダンビ

リアルな家族の描写が身につまされる

 近年、国際的に高い評価を受けている韓国映画は、内容的にもバラエティーに富んだ豊かさがある。

   「夏時間」は、時系列を操作した刺激的な快作「藁にもすがる獣たち」の対局にある静謐なホームドラマの秀作。両作品ともに、新人監督が撮った映画であることに驚かされる。

   本作が長編デビューの女性監督ユン・ダンビは、思春期の少女の心の揺れを繊細に描いている。昨年話題になった「はちどり」より、家族の有り様は自然に感じられた。

   事業に失敗した父親、夫婦喧嘩で実家に戻ってきた叔母、姉弟喧嘩や父娘喧嘩、祖父の介護や財産(不動産)の処分、そして自分たちを残して家を出た母親への複雑な思い。すべての描写がリアルで、自分の体験していないことでさえ身につまされる。

   ユン・ダンビ監督は、インタビューに、「自分が孤独を感じたり行き詰った時、映画に慰められ癒された経験から、観る人の友になってくれるような映画をつくりたかった」と答えている。まさに、そのような映画に仕上がっているのが素晴らしい。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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