岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 B! 名誉勲章の授与を巡る、ベトナム戦争の真実 2021年03月30日 ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 © 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC 【出演】セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダ、ジェレミー・アーヴァイン、ダイアン・ラッド、エイミー・マディガン、アリソン・スドル、ジョン・サヴェージ、ライナス・ローチ 【監督・脚本】トッド・ロビンソン 戦争は人間を苦しめ、罪なものだと訴える ベトナム戦争は、民族自決権を踏みにじったアメリカの侵略戦争である。傀儡政権であった南ベトナム政府を支援するという名目で、アメリカからベトナムに送り込まれた兵力は、最盛期には50万人を優に超えていた。泥沼化した戦争では、北ベトナム軍及び南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)で約110万人、アメリカ軍で約5万8千人の犠牲者を出すに至った。 私が小中学生だった頃のこの戦争は、小田実や鶴見俊輔などの"ベ平連"によるベトナム反戦運動のイメージしかない。子供心にも、アメリカ=悪と思っていた。 しかしながら命を賭して闘っていた兵士に罪はないのだ。 本作の当事者であるピッツェンバーガーは、敵に囲まれ孤立していた陸軍兵士に「空から天使が降りてきた」と言わせた空軍の医療兵だ。彼の職務に忠実で勇敢な行為は、決して勲章を得るためにやったわけではない。英雄になろうとしてはいない。 しかしアメリカ軍人最高の栄誉である「名誉勲章」を、戦死した彼に与えるべきだという助けられた側からの請願は、国防総省から30年以上に渡って無視されてきた。 映画はその真実を知るために、最初は渋々始めたが、次第に調査にのめり込んでいく国防総省職員ハフマン(セバスチャン・スタン)を狂言回しにした、未だに後遺症の残るベトナム戦争の実録ものだ。 アメリカ政府の、一方的に美化された戦争目的のため意気に感じて従軍した兵士たちは、戦地では悲惨で過酷な状況で闘ったにも関わらず、世界で高まる反戦運動と、最終的には敗北したという結果もあり、多くが罪悪感やPTSDに苛まれ、もしくは記憶の封印をしていた。 それでも老兵士たちは、ピッツェンバーガーの死を覚悟したかのような行為を証言をしていく。ピーター・フォンダを始めとする老優たちのセリフや表情は、失った戦友に対する思いに溢れている。 つくづく戦争は人間を苦しめ、罪なものだと訴えるのだ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (11)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年09月20日 / クレオの夏休み 6歳の少女のひと夏の冒険成長譚 2024年09月20日 / ボレロ 永遠の旋律 名曲 "ボレロ" の誕生を目と耳で体感する 2024年09月20日 / ボレロ 永遠の旋律 この名曲が作られた経緯を紐解く、愛と哀しみと苦しみのボレロ more 2018年12月12日 / シネマテークたかさき(群馬県) 観たい映画をかける映画館を地元に…一人の男が立ち上がった。 2021年06月09日 / 【思い出の映画館】かもめ座(神奈川県) 戦後の港町横浜で湾岸労働者たちに愛された二番館 2022年11月23日 / シネマ・ロサ(東京都) 池袋の歓楽街にある映画館で街ごと映画を楽しむ。 more
戦争は人間を苦しめ、罪なものだと訴える
ベトナム戦争は、民族自決権を踏みにじったアメリカの侵略戦争である。傀儡政権であった南ベトナム政府を支援するという名目で、アメリカからベトナムに送り込まれた兵力は、最盛期には50万人を優に超えていた。泥沼化した戦争では、北ベトナム軍及び南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)で約110万人、アメリカ軍で約5万8千人の犠牲者を出すに至った。
私が小中学生だった頃のこの戦争は、小田実や鶴見俊輔などの"ベ平連"によるベトナム反戦運動のイメージしかない。子供心にも、アメリカ=悪と思っていた。
しかしながら命を賭して闘っていた兵士に罪はないのだ。
本作の当事者であるピッツェンバーガーは、敵に囲まれ孤立していた陸軍兵士に「空から天使が降りてきた」と言わせた空軍の医療兵だ。彼の職務に忠実で勇敢な行為は、決して勲章を得るためにやったわけではない。英雄になろうとしてはいない。
しかしアメリカ軍人最高の栄誉である「名誉勲章」を、戦死した彼に与えるべきだという助けられた側からの請願は、国防総省から30年以上に渡って無視されてきた。
映画はその真実を知るために、最初は渋々始めたが、次第に調査にのめり込んでいく国防総省職員ハフマン(セバスチャン・スタン)を狂言回しにした、未だに後遺症の残るベトナム戦争の実録ものだ。
アメリカ政府の、一方的に美化された戦争目的のため意気に感じて従軍した兵士たちは、戦地では悲惨で過酷な状況で闘ったにも関わらず、世界で高まる反戦運動と、最終的には敗北したという結果もあり、多くが罪悪感やPTSDに苛まれ、もしくは記憶の封印をしていた。
それでも老兵士たちは、ピッツェンバーガーの死を覚悟したかのような行為を証言をしていく。ピーター・フォンダを始めとする老優たちのセリフや表情は、失った戦友に対する思いに溢れている。
つくづく戦争は人間を苦しめ、罪なものだと訴えるのだ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。