岐阜新聞 映画部

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「弱いってえぇことやで」。患者の心に寄り添った精神科医

2021年03月29日

心の傷を癒すということ《劇場版》

Ⓒ映画「心の傷を癒すということ」製作委員会

【出演】柄本佑、尾野真千子、濱田岳、森山直太朗、浅香航大、清水くるみ、上川周作、濱田マリ、谷村美月、趙珉和、内場勝則、平岩紙/キムラ緑子、石橋凌、近藤正臣
【脚本】桑原亮子

抗わない・逆らわない姿は、厳しく・気高く・美しい

 私が働いている、就労移行支援事業所に通所する利用者さんは、大半が精神障害か発達障害である。彼らの通院同行で、精神科医や心療内科医に接することが多いが、3分間診療と処方箋の発行が中心の治療の中で、真摯に患者さんに向き合ってくれるお医者さんも少なからずいる。

 本作の主人公である安和隆(柄本佑)先生は、患者の心に寄り添った治療を実践してきた有能な精神科医であり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の先駆者であった。

 前半は、彼が精神科医になる迄を描いていく。

 10歳の時に自分が在日韓国人であることを知った和隆が、大親友の湯浅(濱田岳)に、「オレ本名は安田でなく安やねん。在日やねん」とカミングアウトしたときに、湯浅が「で、これからはどっちで呼べばいいん?」と屈託なく答えたシーンの爽やかさ。

 神戸の名画座で観た『東京物語』。同じシーンのセリフが電車の振動でわからなかった後の奥さん終子(尾野真千子)との恋は素敵すぎて身震いする。

 そして1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。阪神高速の橋げたが落下し、神戸の街が焼野原になった光景は今でも忘れない。

 この震災では、様々な「正の遺産」がもたらされたが、医療面では、災害派遣医療チーム設立と、被災者のこころのケアに注目が集まった点だ。

 自身も被災した安先生は、避難所のみんなに寄り添いながら言う。

 少年には「弱いってえぇことやで」「他人の弱いとこがわかって助けてあげられる」

 解離性同一性障害の女性の「こんな病気になったんは、私が弱いからですよね?」という問いには、「違う。生きる力が強いんや」

 最後は末期がんと闘いつつ、それを受け入れていく。

 そして迷う後輩の医師北林には、「焦ることない。ゆっくり進むことで、皆が見落としたもん見つけられる」とアドバイスする。

 抗わない・逆らわない姿は、厳しく・気高く・美しいのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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