岐阜新聞 映画部

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ミス・フランスを夢見た"私"の物語

2021年03月22日

MISS ミス・フランスになりたい!

© 2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

【出演】アレクサンドル・ヴェテール、イザベル・ナンティ、パスカル・アルビロ、ステフィ・セルマ
【監督・原案・脚本】ルーベン・アウヴェス

優しさに包まれていたら生き易くなる

 昨年公開されたベルギー映画『Girl/ガール』(ルーカス・ドン監督)は、プロのバレリーナになることを夢見た15歳のトランスジェンダーの少女ルルが主人公。また、日本映画では、『ミッドナイトスワン』(内田英治・監督)が記憶に新しい。トランスジェンダーである凪沙(草彅剛)と、行き場をなくした姪の一果(服部樹咲)との、疑似親子の愛の物語。

 いずれも、自分らしく生きようとすることと、それ故の生き辛さが描かれていた。

 『MISS ミス・フランスになりたい!』は、9歳で"ミス・フランス"になりたい!と、素直に自分の気持ちを宣言するアレックスが主人公。交通事故で両親を失い、本当の自分を閉じ込めて生きるしかなかったが、それでも世間との軋轢に耐えながら成長し、アレックス(アレクサンドル・べテール)は、24歳になろうとしていた。男臭いボクシングジムの雑用係の仕事をしながら、様々な人種や、ちょっと世間ズレした人たちが集まるシェアハウスで暮らしている。

 ある日、幼馴染のエリアス(クエンティン・フォーレ)と偶然再会する。夢を叶えて輝いて見えるエリアスを目の当たりにすることで、忘れかけていた夢に気づき、再び、それに向き合うことを決意する。

 24歳にして疲れ切っていたアレックスは、クローゼットから解き放たれ、美しく変わっていくのだが、このアレクサンドル・べテールの湧き上がる美への豹変ぶり、ミスコンの舞台を目指すためのさりげない所作のひとつひとつが輝きを増してゆく過程と瞬間が凄い。

 性差とかフェミニズムとかを持ち出すと、話は些かややこしくなる。"ちゃんとわかっていますよ!" と言えるのに、現実はそれにそっているとは言い難い。舞台裏の諸々や、女性の欲だって、否定はできない。生き易さと、素直な自分を表現することの共存は簡単じゃない。

 アレックスのまわりに集う個性的な仲間の存在が、折に触れ、彼=彼女の心の隙間を埋め励ましてくれる。この優しさが映画の核心的な肝かも知れない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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