岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

香水を「調合」するように、人生も「調和」によって豊かに色づく

2021年03月23日

パリの調香師 しあわせの香りを探して

© LES FILMS VELVET - FRANCE 3 CINÉMA

【出演】エマニュエル・ドゥヴォス、グレゴリー・モンテル、セルジ・ロペス
【監督・脚本】グレゴリー・マーニュ

香りは郷愁を呼び起こし心を癒し、人を幸せにする

 本作は、ストレスから嗅覚障害を発症し、香水調合の第一線から退くはめになった天才調香師アンヌ(エマニュエル・ドゥヴォス)と、不器用だが正直なプロ運転手ギヨーム(グレゴリー・モンテル)との、立場を超えた信頼と絆で描く、2人の再生ストーリーだ。

 シャネル、ディオール、エルメスなどフレグランスの有名ブランドは、フランスばかり。美術、音楽、美食にワイン、憧れのおフランスは文化の香りで一杯だが、香りそのものを楽しむ文化もしっかりと根づいている。

 フランスの事情に通じているサイトを見ると、著名なパヒューマー(香りのクリエーター)は、フランス人がとても多いそうだ。

 映画は、それぞれ全く別の世界で生きてきたアンヌとギヨームが、様々なエレメントの中からより優れた成分を作用させ「調合」していく香水のように、人生も「調和」によって豊かに色づいていくのだと軽やかに描いていく。

 新型コロナウイルス感染症の初期症状に嗅覚障害が報告されているが、職業に直結しているアンヌの恐怖や苦悩、誰にもわかってもらえないという孤独感が、彼女を傲慢でわがままにさせたのであろう。

 それを解きほぐす役割がギヨームだ。今まで出会ったことのなかった違う階層の男性、しかし同じく不器用でストイックで生きるのが下手くそ。次第に、お互いの足らない部分を補いながら「調和」していく様子は、微笑ましくもあり嬉しくもある。

 シャネルNo.5、草の香り、レモン石鹸の香り。香りは郷愁を呼び起こし心を癒し、人を幸せにする。

 映画は視覚と聴覚の芸術だけど、本作を観ていたら、脳内にある嗅覚が働いてきて、いい匂いがしてきた。人間の脳は、時にいい錯覚をするのだ。これも映画の醍醐味である。

 私もそろそろ加齢臭が気になる年頃になってきた。今までハードルが高すぎた香水にチャレンジしてみようかな。でもスメハラと言われるのがオチかも。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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