岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

運命の悪戯を92分間に詰め込んだコメディ

2021年03月17日

ワン・モア・ライフ!

©Copyright 2019 I.B.C. Movie

【出演】ピエールフランチェスコ・ディリベルト、トニー・エドゥアルト、レナート・カルペンティエーリ
【監督・脚本】ダニエーレ・ルケッティ

天国は待つことができる 家族との絆は取り戻せるか?

 人の死にまつわる現象は、体験や迷信を含めて様々ある。小説や映画では、それをモチーフにした物語も少なくない。人は死の瞬間、これまでの記憶がフラッシュバックのように甦る…というのはよくある。

 イタリア・シチリア島のパレルモが舞台。そこに暮らすパオロ(ピエルフランチェスコ・ディリベルト)の日常、スクーターでの通勤風景。いつもの景色、いつもの道、いつもの交差点…そこで遭遇した交通事故という非日常…パオロはいきなり死んでしまう。しかし、パオロがその時見た人生の甦りは、タクシー待ちの行列にはどう並べばいいのか?とか、冷蔵庫の庫内灯ははたしてちゃんと消えているか?とか、愛人から浴びせられた意味深で不可解な言葉は何なのか?とか、言わば、理不尽にもどうでもいいことばかりだった。続いて、やたらと長い整理番号を渡されて、待たされることになったのは、天国への入口の待合室だった。

 ここで、憤懣やるかたないパオロは、自らの早過ぎる死に対してクレームをつける。

 ここまでの導入部を見れば、ファンタジーではあるものの、ドタバタコメディかと予測できるのだが、監督、脚本のダニエル・ルケッティは、平凡な男の人生に焦点を当て、所々にスパイスの味つけを忘れないドラマに仕上げる。

 パオロのクレームによって、寿命の計算にミスがあったことが発覚する。起死回生の喜びも束の間、誤差はたったの92分だった。

 原作は脚本家でもあるフランチェスコ・ピッコロの短編小説「取るに足らない幸せの瞬間」と「取るに足らない不幸の瞬間」の2冊で、日常のスケッチに徹しているため、ピッコロ曰く「映画化には不向き」という材だった。監督のルケッティは熱烈なピッコロのファンで、映画化ではふたりの共同作業が実現した。

 人生のやり直しにはあまりにも短い92分。パオロは家族の絆を取り戻そうとする。

 濃厚な時間は盛り沢山で混乱する事必至だが、映画ならではのマジックとして楽しめる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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