岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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どうでもよさげに見える今を大切に生きようという、人情派喜劇

2021年03月17日

ワン・モア・ライフ!

©Copyright 2019 I.B.C. Movie

【出演】ピエールフランチェスコ・ディリベルト、トニー・エドゥアルト、レナート・カルペンティエーリ
【監督・脚本】ダニエーレ・ルケッティ

「人生ゲーム」は、みんなで楽しむコミュニケーションツールだ

 本作の主人公パオロ(ピエールフランチェスコ・ディリベルト)は、仕草・言葉・雰囲気、全ての面で感情表現が豊かで陽気で情熱的、かつ身勝手で女好きという典型的イタリア人である。本国で大ヒットしたのも自虐的な部分が受けたのだろう。

 そんな彼が、いつもの横着な運転でスクーターに乗っていて、あっけなく事故って昇天するところから映画は始まる。

 地上と同じくごった返す天国への入口、やたら長い整理番号、いい加減な事務処理、きっとすべてイタリア社会の「あるある」で笑いどころだと思われる。あとの展開も、イタリア人大爆笑!だと推測されるシーンの連続だ。

 こう書かざるをえないのは、イタリア人とは笑いのツボが違いすぎて、私には広がってきた歯の隙間からスースー息が漏れる程度の笑いだったからだ。決してけなしているわけではない。捧腹絶倒の笑いじゃなかっただけだ。

 クスクス笑いのひとつ。世界的ブームになったスムージー(ジンジャー入り)で得られた人生のロスタイムは、たったの92分!これ健康志向を完全にバカにしている。

 半笑い半泣きのひとつ。彼はこの92分を有効に使おうとしたが、思い出すのは奥さんに隠れて、片っ端から浮気をしまくったチャラ男の武勇伝ばかり。娘や息子の子育てはお任せで、「お父さんは最初からいなかったようなもの」と言われてしまう。残酷だけど自業自得だ!

 そして「人生、山あり、谷あり」の「人生ゲーム」。アメリカ発のボードゲームなわけで、イタリアにあっても不思議はないのだが、妙に親近感がわいてくる。何故ならこのゲームが、黙々と一人でやるのでなく、家族や友だちとワイワイやりながら楽しむコミュニケーションツールだからだ。

 原題は“Momenti di Trascurabile Felicita(取るに足りない幸福の瞬間)“。

 どうでもよさげに見える今を大切に生きようという、人情派喜劇である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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