岐阜新聞 映画部

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紛れもなく福田映画印の"三國志"

2021年02月10日

新解釈・三國志

Ⓒ2020映画『新解釈・三國志』製作委員会

【出演】大泉洋、ムロツヨシ、橋本さとし、高橋努、橋本環奈、岩田剛典、渡辺直美、城田優、佐藤二朗、賀来賢人、山本美月、岡田健史、矢本悠馬、半海一晃、小栗旬、磯村勇斗、阿部進之介、山田孝之
【監督・脚本】:福田雄一

真剣さと安っぽさが混在して失速した?

 史書としての「三國志」は、中国の"後漢"末期から三国時代にかけて、西暦では180年から280年頃の時代、中国の"魏"、"蜀"、"呉"の三国を舞台の中心に、様々な人物たちが国の存亡をかけて戦った、所謂、亡国史のことを指す。

 さしずめ日本で言うところの戦国時代のようなものか? しかし、これは誤解を招きそうなので、比較はしないほうが賢明だろう。

 「三國志」は日本では養老4(720)年に成立した「日本書紀」に記されているから、その伝来は早い。その後も引用、アンソロジーとして、いくつもの文献にその痕跡を見ることができる。

 明治以降は、小説を中心に広く登場するようになるが、それは史書ではなく、「三國志講義」をもとにしたものが多く、別ものとして区別する必要がある。「三國志講義』は"明"時代に「三國志」をもとに、説話や雑劇を交えて編まれた創作色の強い別ものである。

 ブームは戦後になって高まりを見せ、文学にとどまることなく、多ジャンルに広がった。しかし、ここでも"講義"の影響が強く、劉備、諸葛孔明、曹操などの主要人物は独自の世界観によって描かれるようになった。

 映画『新解釈・三國志』は、題名にある"冠"のとおり、歴史学者・蘇我宗光(西田敏行)の解釈で進行する物語である。

 監督は福田雄一。これまでの作品同様に「三國志」を題材にしようが、そのスタンスはブレる事がない‥これはあくまでも褒め言葉。敢えて苦言を呈するならば、いつもの福田映画の軽快な肩すかし感が影を潜めている。荘厳すぎる衣装のせいか、はたまた、史劇の重さゆえか、役者のキレがいつになく悪くはないか?

 最後まで乗れないことを自問すれば、ノレないギャグは苦痛でしかないことを肝に銘じる必要があると、いつもの解答しか見当たらない。再び福田映画との対峙は可能か?

 そんな杞憂はさておいて、「三國志」の信者からは、大人の対応がされるであろうから、その点はご心配無用。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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