岐阜新聞 映画部

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カトリーヌ・ドヌーヴの、慈愛に満ちた包容力で包み込む家族映画

2021年02月09日

ハッピー・バースデー 家族のいる時間

©Les Films du Worso

【出演】カトリーヌ・ドヌーヴ エマニュエル・ベルコ ヴァンサン・マケーニュ セドリック・カーン
【監督・脚本】セドリック・カーン

トラブルメーカーの長女の振る舞いから、家族の本音が噴出する!

 私が大学生の時に観た『シェルブールの雨傘』(1964)のカトリーヌ・ドヌーヴは、ミューズと呼ぶに相応しい鮮烈な印象であった。その後も名匠・巨匠に起用され続けて多くの名作に主演し、フランスを代表する大女優として燦然と輝き続けていた。

 しかし然しものドヌーヴも、オゾン監督の『8人の女たち』(2002)で、出演女優8人全員でのベルリン映画祭銀熊賞を受賞して以降は、少なくとも私の中では鳴りを潜めていた。

 が、そんな心配ご無用と、十数年ぶりに、年齢不詳の若々しさでスクリーンに降臨してきて下さったのだ。

 本作は、是枝監督の『真実』(2019)に引き続き、衰えぬ美貌と自信に満ちた貫禄で、大邸宅に住む大御所を演じた、まさに役名カトリーヌ・ドヌーヴというべき映画である。

 70歳になるアンドレア(ドヌーヴ)は、二人目の夫ジャン、長女の娘エマとフランス南西部の邸宅で暮らしている。彼女の誕生日を祝うため、しっかり者の長男ヴァンサン(セドリック・カーン=本作の監督)一家、うだつの上がらない映像作家の二男ロマン(ヴァンサン・マケーニュ)とその恋人がやってくる。

 そこへ3年間音信不通だった情緒不安定の長女クレール(エマニュエル・ベルコ)が舞い戻って来ることから始まる一家の悲喜劇。

 何となくよそよそしかった家族は、トラブルメーカーの長女の直情径行の振る舞いによって、胸の奥に秘めていた激しい怒りや嫉妬、恨みが表に出てくる。肉親だからこその感情のぶつかり合いだ。

 映画はバラバラになりかけた家族が、アンドレアの慈愛に満ちた包容力と母性で、辛うじてバランスを保っていく。カトリーヌ・ドヌーヴの存在感は、文句を言わせない迫力で説得力があり、さすがだ。

 ロマンが、家族映画の名手・小津安二郎を真似て広角の固定撮影をするなど、巨匠にオマージュを捧げつつ、フランスらしいエスプリのきいた家族映画となっている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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