岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品詩人の恋 B! 詩人は綺麗な花でなく、美しい人に恋をした。たまたま青年だっただけ。 2021年01月28日 詩人の恋 ©2017 CJ CGV Co., Ltd., JIN PICTURES, MIIN PICTURES All Rights Reserved 【出演】ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラム 【監督・脚本】キム・ヤンヒ 激しい感情の高ぶりと愛への渇望は、詩人を成長させる 自慢話で恐縮だが、子どもの頃は詩を書くのが好きだった。当時あった蒲郡市内の小中学生の作文や詩を集めた文集「三河湾」の特選をとったこともある。もっとも意識してからは入選すらしなかったので、フロックだったと思われる。 私の地元は風光明媚な観光地で、文学や詩の題材に事欠かないが、本作の舞台・済州島も、韓国で初めての世界自然遺産に登録された屈指の観光地だ。 主役は、気弱で生活力も無く、奥さんに頭の上がらない売れない詩人テッキ(ヤン・イクチュン)と、気が強く、乏精子症の夫にプレッシャーを与え続ける妻ガンスン(チョン・ヘジン)という『喜劇 愛妻物語』の韓国版みたいな設定。母ちゃんの方が強い映画は、身につまされて侘しくなるのだ。 映画の最初の方で、テッキの詩を論評するシーンが面白い。「情景が浮かぶ」との当たり障りのない意見が出て拍手をもらうが、1人の女性の発言を口火に「綺麗な花に何の力がある?」「夢見がちで現実感に乏しい」などと酷評されてしまう。 妊活はうまくいかず、詩作もスランプに陥ったテッキの前に現れたのが、ドーナツ屋で働く美青年のセユン(チョン・ガラム)だ。 彼の呟きをヒントにして書いた詩は好評。彼のトイレでの女性との情事を見て興奮し、人工授精用の精子がたっぷり出る。彼の家庭環境が恵まれないことを知ると、援助したくなってくる。 おそらくテッキは、今まで同性愛的感情を覚えた事がなかったと思うが、どんどんセユンにのめり込んでいく。若い美青年を追っていく構図は『ベニスに死す』と同じである。 でもテッキは、アッシェンバッハ教授と違って、セユンに直接想いをぶつけ、必死で訴える。「面倒を見る。君を養っていける」。 この激しい感情の高ぶり愛への渇望は、詩人としてテッキを成長させ、売れっ子となった。綺麗だけの詩から、人生の喜びと哀しみに溢れた詩を書けるようになったに違いない。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2022年10月17日 / 港南台シネサロン(神奈川県) 生活の延長線にある居心地の良い街の映画館。 2024年08月28日 / サツゲキ(北海道) 市民から愛された劇場が4つのミニシアターで復活。 2023年03月22日 / 渋谷TOEI(東京都) 東映初の直営館が69年の歴史に幕を下ろす。 more
激しい感情の高ぶりと愛への渇望は、詩人を成長させる
自慢話で恐縮だが、子どもの頃は詩を書くのが好きだった。当時あった蒲郡市内の小中学生の作文や詩を集めた文集「三河湾」の特選をとったこともある。もっとも意識してからは入選すらしなかったので、フロックだったと思われる。
私の地元は風光明媚な観光地で、文学や詩の題材に事欠かないが、本作の舞台・済州島も、韓国で初めての世界自然遺産に登録された屈指の観光地だ。
主役は、気弱で生活力も無く、奥さんに頭の上がらない売れない詩人テッキ(ヤン・イクチュン)と、気が強く、乏精子症の夫にプレッシャーを与え続ける妻ガンスン(チョン・ヘジン)という『喜劇 愛妻物語』の韓国版みたいな設定。母ちゃんの方が強い映画は、身につまされて侘しくなるのだ。
映画の最初の方で、テッキの詩を論評するシーンが面白い。「情景が浮かぶ」との当たり障りのない意見が出て拍手をもらうが、1人の女性の発言を口火に「綺麗な花に何の力がある?」「夢見がちで現実感に乏しい」などと酷評されてしまう。
妊活はうまくいかず、詩作もスランプに陥ったテッキの前に現れたのが、ドーナツ屋で働く美青年のセユン(チョン・ガラム)だ。
彼の呟きをヒントにして書いた詩は好評。彼のトイレでの女性との情事を見て興奮し、人工授精用の精子がたっぷり出る。彼の家庭環境が恵まれないことを知ると、援助したくなってくる。
おそらくテッキは、今まで同性愛的感情を覚えた事がなかったと思うが、どんどんセユンにのめり込んでいく。若い美青年を追っていく構図は『ベニスに死す』と同じである。
でもテッキは、アッシェンバッハ教授と違って、セユンに直接想いをぶつけ、必死で訴える。「面倒を見る。君を養っていける」。
この激しい感情の高ぶり愛への渇望は、詩人としてテッキを成長させ、売れっ子となった。綺麗だけの詩から、人生の喜びと哀しみに溢れた詩を書けるようになったに違いない。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。