岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

名作戯曲誕生秘話を描いたエンタメ喜劇

2021年01月06日

シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!

© LEGENDE FILMS – EZRA – GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA – EZRA - NEXUS FACTORY - UMEDIA, ROSEMONDE FILMS - C2M PRODUCTIONS

【出演】トマ・ソリヴェレス、オリヴィエ・グルメ、マティルド・セニエ、トム・レーブ、リュシー・ブジュナー
【監督・原案・脚本】アレクシス・ミシャリク

ジタバタしないと書けないのは作家の業

 シラノ・ド・ベルジュラックと言えば、特徴的な容姿、あの巨大な鼻のことを思い浮かべる、その圧倒的な存在感は広く世に知られている。

 日本ではフランスでの初演から25年を経た1922年に辰野隆と鈴木信太郎により翻訳されている。演劇として上演されたのは、翌26年、それは額田六福による翻案で「白野弁十郎」と題した。上演したのは新国劇で、もとは歌舞伎から派生した劇団だったので、"白野"は時代劇として描かれている。その後、松竹により帝劇や新歌舞伎座で市川左團次、早川雪洲の主演で上演された。

 新劇系では、35年、日本俳優協会の演出で日比谷公会堂での公演がはじまりかも知れない。その時、シラノを演じたのが三津田健(満田健児)で、戦後は文学座で繰り返し上演されている。一方、新国劇でも当たり狂言となり、白野役は沢田正二郎から島田正吾に受け継がれた。晩年、島田は一人芝居版のシラノをライフワークとしている。

 他にも、歌舞伎界では尾上松緑(二代目)が演じ、文学座では江守徹に受け継がれた。また、劇団四季や早稲田小劇場でも上演されている。

 『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』は、この名作戯曲が誕生するまでの舞台裏を描いている。時は1897年、場所はパリ。劇作家のエドモンド(トマ・ソリベリ)は、2年に及ぶ大スランプにはまり込んでいた。彼の代名詞であった"詩劇"がもはや時代遅れになりつつあることに気づきつつも、そこからの脱却は容易ではなかった。

 そしてもうひとり、名優コクラン(オリビエ・グルメ)は、訳ありで追い込まれ…借金で首が回らなくなり、起死回生の当たりをとらなければならなかった。そこで白羽の矢が立ったのがエドモンドだった。

 ところが、コクランが設定した企画には初日まで3週間の時間しかないのだった。加えて、エドモンドの周りにはトラブルが絶えない。わがまま放題の名女優。ご都合主義で何かと注目をつけてくるスポンサー。嫉妬深い妻。恋に落ちた親友の俳優は恋文の代筆を頼み込んでくる。

 あまりに上手いお話なので、どこまでが真実?と思うのも一瞬。スピーディーなエンタメ喜劇をご堪能あれ!

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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