岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品君の誕生日 B! セウォル号沈没事故。主役のいない誕生日会を描いた友情の映画 2020年12月30日 君の誕生日 © 2019 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & NOWFILM & REDPETER FILM & PINEHOUSEFILM. All Rights Reserved. 【出演】ソル・ギョング、チョン・ドヨン 【監督・脚本】イ・ジョンオン 人間は二度死ぬ。肉体が滅びた時と、みんなに忘れ去られた時だ 2020年のアカデミー賞では、非英語作品として初めて作品賞受賞という快挙を果たした『パラサイト 半地下の家族』が話題をさらったが、実はもうひとつ韓国映画界から初めてノミネートされた作品があることをご存じだろうか? それは短編ドキュメンタリー賞候補になった『不在の記憶(IN THE ABSENCE)』という作品である。惜しくも受賞はならなかったが、セウォル号沈没事故を題材にしたドキュメンタリーだ。事故当時の現場映像と通信記録、遺族のインタビューによって構成された作品で、生々しい臨場感と空気感がある。You Tubeで観ることが可能だ。 本作は、2014年4月16日に発生し、修学旅行中の高校生ら300人以上の犠牲者を出したセウォル号の悲劇を扱った映画である。だがこれが長編デビューのイ・ジョンオン監督は事故を直接的には描いていない。 両親が息子の突然の死に対し、受け入れられない心の苦痛や罪悪感に苛まれ、心無い言葉に傷つきながらも、寄り添ってくれる理解ある人々に助けられながら、次第に心を開いていくまでの映画になっている。普遍的なテーマにしたことで、セウォル号事故だけでなく、理不尽な事故や犯罪・自然災害などで悲しみにくれる人たちとの、共感や共有が出来ていると思う。 亡くなったスホの、主役のいない誕生日会。事故当時ベトナム赴任中で駆け付けることができず、罪悪感を抱えたままの父ジョンイル(ソル・ギョング)と、参加すれば別れを認めることとなるので誕生日会を拒否する母スンナム(チョン・ドヨン)。決して押し付けず、寄り添ってくれる周囲の励ましもあり、スホの友達もいっぱい集まった誕生日会に思い切って参加する。日本流で言えば「スホを偲ぶ会」だが、心温まるネーミングだ。 「人間は二度死ぬ。肉体が滅びた時と、みんなに忘れ去られた時だ。」という名言がある。その言葉が身に染みる、友情の映画だ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年07月23日 / 青春18×2 君へと続く道 切なさ溢れる抒情的恋愛映画の秀作 2024年07月22日 / 青春18×2 君へと続く道 ピュアな恋を描いた大人のラブストーリー 2024年07月22日 / 青春18×2 君へと続く道 初恋の思いを辿る台湾=日本合作恋愛映画 more 2021年10月13日 / 【思い出の映画館】千日前セントラル(大阪府) 戦後の活気ある商店街でアメリカ映画を送り続けた。 2018年12月26日 / 高崎電気館(群馬県) 閉館された映画館にふたたび灯がともる時 2017年12月06日 / 岐阜ロイヤル劇場(岐阜県) 昭和の薫りを色濃く残す商店街で古き良き時代の名画に触れる more
人間は二度死ぬ。肉体が滅びた時と、みんなに忘れ去られた時だ
2020年のアカデミー賞では、非英語作品として初めて作品賞受賞という快挙を果たした『パラサイト 半地下の家族』が話題をさらったが、実はもうひとつ韓国映画界から初めてノミネートされた作品があることをご存じだろうか?
それは短編ドキュメンタリー賞候補になった『不在の記憶(IN THE ABSENCE)』という作品である。惜しくも受賞はならなかったが、セウォル号沈没事故を題材にしたドキュメンタリーだ。事故当時の現場映像と通信記録、遺族のインタビューによって構成された作品で、生々しい臨場感と空気感がある。You Tubeで観ることが可能だ。
本作は、2014年4月16日に発生し、修学旅行中の高校生ら300人以上の犠牲者を出したセウォル号の悲劇を扱った映画である。だがこれが長編デビューのイ・ジョンオン監督は事故を直接的には描いていない。
両親が息子の突然の死に対し、受け入れられない心の苦痛や罪悪感に苛まれ、心無い言葉に傷つきながらも、寄り添ってくれる理解ある人々に助けられながら、次第に心を開いていくまでの映画になっている。普遍的なテーマにしたことで、セウォル号事故だけでなく、理不尽な事故や犯罪・自然災害などで悲しみにくれる人たちとの、共感や共有が出来ていると思う。
亡くなったスホの、主役のいない誕生日会。事故当時ベトナム赴任中で駆け付けることができず、罪悪感を抱えたままの父ジョンイル(ソル・ギョング)と、参加すれば別れを認めることとなるので誕生日会を拒否する母スンナム(チョン・ドヨン)。決して押し付けず、寄り添ってくれる周囲の励ましもあり、スホの友達もいっぱい集まった誕生日会に思い切って参加する。日本流で言えば「スホを偲ぶ会」だが、心温まるネーミングだ。
「人間は二度死ぬ。肉体が滅びた時と、みんなに忘れ去られた時だ。」という名言がある。その言葉が身に染みる、友情の映画だ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。