岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

悲劇の先に希望を託した反ナチ映画の佳作

2020年12月18日

アーニャは、きっと来る

©Goldfinch Family Films Limited 2019

【出演】ノア・シュナップ、トーマス・クレッチマン、ジャン・レノ、アンジェリカ・ヒューストン
【監督】ベン・クックソン

ピレネー山脈の麓にある美しい村で純真な少年が見つめたもの

 駅に停まる列車の窓の隙間から、いくつもの手が差し出されている。客車ではない車両に荷物のように押し込まれるのはユダヤ人で、行き先は収容所。行列の中に幼い娘と手を繋いだその父親らしき男がいる。何処かで悲鳴が上がり、あたりが騒然した隙を突くように、車両の反対側に回り込んだ親子。停車した客車に向かい、懇願するように娘を託す。ひとりの女性が手を差し伸べ女の子を受け取る。悲壮な別れ。

 『アーニャは、きっと来る』は、今も絶えることのない、ナチスによるユダヤ人迫害を描いていた映画である。

 1942年、第二次世界大戦の最中、ナチスはフランスに侵攻し、パリを中心とした北部は占拠下にあった。マルセイユのはるか西、トゥルーズの南に位置するその村は、3000メートル級の山が連なる、ピレネー山脈の麓にあった。そこに住む羊飼いの少年ジョー(ノア・シュナップ)は、戦いからは離れた平和な日常を送っているように見えるが、出征した父親は捕虜となり不在が続いていた。

 ある日、熊に遭遇したジョーは、逸れた愛犬を探すため森に入る。そこで出会うのはナチスから逃れ、村から離れた山中にひとり暮らすオルカーダ(アンジェリカ・ヒューストン)のもとに匿われている、ユダヤ人のベンジャミン(フレデリック・シュミット)だった。彼は冒頭の娘を逃した父親であり、ユダヤ人の子どもを山を越えた先にあるあるスペインへ、脱出させる計画を立てながら、娘=アーニャの到着を待っているのだった。

 そんな村にもナチスの部隊がやって来て、駐留するようになる。

 雪をいただく山々に囲まれた村にナチスの横暴は容赦なく牙を剥く。そんな中、ジョーはナチスの下士官(トーマス・クレッチマン)と親しくなる。

 脱出作戦の緊迫感と不思議な信頼感で結ばれたジョーとナチ将校の交流を絡めた物語は、戦争とは乖離した温かな雰囲気を醸し出す。ジョーの純真な瞳に映るのは、残酷な悲劇だろうか…希望を託したアーニャはやって来るのか…?反ナチスものの佳作として記憶される映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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