岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品アーニャは、きっと来る B! 市井の無名の少年が協力した、ユダヤ人脱出物語 2020年12月18日 アーニャは、きっと来る ©Goldfinch Family Films Limited 2019 【出演】ノア・シュナップ、トーマス・クレッチマン、ジャン・レノ、アンジェリカ・ヒューストン 【監督】ベン・クックソン 差別と偏見なきコミュニティーは素晴らしい 「最も長い歴史を持つ嫌悪」と呼ばれる反ユダヤ主義は、2000年以上続いている差別である。私の友人の中には「ユダヤが世界を支配している」などと固く信じている奴もいる。そういう陰謀論を信ずる人は決して少数派ではなく、トランプ大統領を支持する「Qアノン」と呼ばれる信奉者たちは、トランプが小児性愛者の秘密結社と闘っているのだと信じて疑わない。 そんな人間の愚かしさは、生まれもった思想では決してない。 本作の主人公、フランスとスペインの国境・ピレネー山脈の麓レスカンに住む羊飼いの少年ジョー(ノア・シュナップ)は、アーニャの父でユダヤ人のベンジャミン(フレデリック・シュミット)に聞く。「「なぜユダヤ人は嫌われるの?」。 純粋無垢な子どもに差別意識などあるはずもなく、差別は後付けなのだとわかってくる。子どもを主役に持ってくることで、ユダヤ人救出が、人道主義や正義感だけでなく、迫害され殺されるかもしれない人に対しての、人間の本質的理性なのだと浮かび上がらせる。 さらにユダヤ人救出には、シンドラーや杉原千畝などの著名人だけでなく、無数の市井の無名人たちが歴史に名を残すことなく協力してきたのだと、映画は我々に知らせてくれるのだ。 なおかつ国境の村に駐屯してきたナチスドイツ軍を一方的に悪者にせず、息子を亡くした伍長(トーマス・クレッチマン)との交流も、抒情的に描かれている。人間の善悪は紙一重で、時代や境遇によって変わってくるのだと伝えてくれる。 ピレネー山脈の景色はのどかで美しく、子熊を守ったお母さん熊や空を飛び交う鷹たちも、人間同士の醜い争いをあざ笑うかのように自然に溶け込んでいる。羊の「移動放牧」を絡めた脱出劇はスリリングであり、感動的だ。 ベンジャミンが、見知らぬ人に一旦預けた幼きアーニャは、果たしてこの地に来るのかどうか? 差別と偏見なきコミュニティーは素晴らしいのだ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2022年07月05日 / FLEE フリー 真実を語るためのアニメーションドキュメンタリー 2022年07月05日 / FLEE フリー 自らの過酷な体験と不合理を世に知らしめた映画 2022年07月04日 / 帰らない日曜日 特別な1日を振り返る秘密の恋の物語 more 2018年11月07日 / 大川シネマホール(福岡県) 若者が魅力に感じる街にしようと立ち上げた映画館 2018年01月24日 / シネマディクト(青森県) 北の街にあるミニシアターで映画談議に花を咲かせる 2019年10月16日 / シネマ・ジャック&ベティ(神奈川県) 戦後からハマの映画ファンを唸らせ続けた双子の映画館 more
差別と偏見なきコミュニティーは素晴らしい
「最も長い歴史を持つ嫌悪」と呼ばれる反ユダヤ主義は、2000年以上続いている差別である。私の友人の中には「ユダヤが世界を支配している」などと固く信じている奴もいる。そういう陰謀論を信ずる人は決して少数派ではなく、トランプ大統領を支持する「Qアノン」と呼ばれる信奉者たちは、トランプが小児性愛者の秘密結社と闘っているのだと信じて疑わない。
そんな人間の愚かしさは、生まれもった思想では決してない。
本作の主人公、フランスとスペインの国境・ピレネー山脈の麓レスカンに住む羊飼いの少年ジョー(ノア・シュナップ)は、アーニャの父でユダヤ人のベンジャミン(フレデリック・シュミット)に聞く。「「なぜユダヤ人は嫌われるの?」。
純粋無垢な子どもに差別意識などあるはずもなく、差別は後付けなのだとわかってくる。子どもを主役に持ってくることで、ユダヤ人救出が、人道主義や正義感だけでなく、迫害され殺されるかもしれない人に対しての、人間の本質的理性なのだと浮かび上がらせる。
さらにユダヤ人救出には、シンドラーや杉原千畝などの著名人だけでなく、無数の市井の無名人たちが歴史に名を残すことなく協力してきたのだと、映画は我々に知らせてくれるのだ。
なおかつ国境の村に駐屯してきたナチスドイツ軍を一方的に悪者にせず、息子を亡くした伍長(トーマス・クレッチマン)との交流も、抒情的に描かれている。人間の善悪は紙一重で、時代や境遇によって変わってくるのだと伝えてくれる。
ピレネー山脈の景色はのどかで美しく、子熊を守ったお母さん熊や空を飛び交う鷹たちも、人間同士の醜い争いをあざ笑うかのように自然に溶け込んでいる。羊の「移動放牧」を絡めた脱出劇はスリリングであり、感動的だ。
ベンジャミンが、見知らぬ人に一旦預けた幼きアーニャは、果たしてこの地に来るのかどうか?
差別と偏見なきコミュニティーは素晴らしいのだ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。