岐阜新聞 映画部

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偽善家のフェミニストに、猛反省を促す映画

2020年12月17日

82年生まれ、キム・ジヨン

© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

【出演】チョン・ユミ、コン・ユ、キム・ミギョン
【監督】キム・ドヨン

子どもが生まれたら、育児を「手伝う」って!

 儒教が生活の規範として定着している韓国では、女性は「三従の道(父・夫・子に従う)」の理念が強要され、当然のように男性の従属的な存在だとされてきた。しかしながら国際的なフェミニズムの潮流は韓国にも新しい流れをもたらし、1995年に「女性発展基本法」が制定。その後1998年の金大中政権発足以降は、女性政策が飛躍的な発展を遂げてきている。

 本作の主人公、キム・ジヨンは1982年生まれ。その年一番多く命名された名前だそうだ。88年ソウル五輪の年に小学校入学。94年中学、97年高校、2000年大学入学と、韓国の女性政策の推進と共に学生時代を歩んでいる。

 そして現在のキム・ジヨン(チョン・ユミ)は30代後半。優しい夫デヒョン(コン・ユ)と、可愛い娘の三人家族。一見幸せに包まれた生活だが、ジヨンは精神を病んでいた。心配した夫のアドバイスで精神科を受診、カウンセリングを受けることとなる。そこで描かれ語られる女性の生きづらさの数々は、女性差別の根深さをあぶり出していく、なんて暢気に批評していちゃいけない映画である。私自身が、うちの奥さんに無意識にやってきた行いや言動が如何に身勝手なものだったかを思い知らされる、私のような偽善家のフェミニストに猛反省を促す映画なのだ。

 夫デヒョンの「子どもが生まれたら育児家事を手伝うから」の「手伝う」というフレーズ。彼が育児休暇を取ってもいいと言う際、「読書したり勉強もしたいし」という、育児は「人生の休憩」だという思い上がり。私にとってみては、「気が付かなくてすみません」と言うほかない!

 あれもダメ、これもいけないと、ハッとすることばかりの映画だが、当の女性が「なんで育児をほったらかして働くの?」というシーンが随所にある。問題は多岐にわたるうえ複雑なのだ。

 様々な問題提起をしてくれる『82年生まれ、キム・ジヨン』。みんなで見て考える映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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