岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

25年分の思い出を再生する青春映画

2020年12月09日

PLAY 25年分のラストシーン

©2018 CHAPTER 2 - MOONSHAKER II - MARS FILMS - FRANCE 2 CINEMA - CHEZ WAM - LES PRODUCTIONS DU CHAMP POIRIER/ PHOTOS THIBALUT GRABHERR

【出演】マックス・ブーブリル、アリス・イザーズ、マリック・ジディ、アルチュール・ペリエ、ノエミ・ルヴォウスキー、アラン・シャバ
【監督】アントニー・マルシアーノ

ビデオカメラがスマホに変わっても、記憶が後悔に変わっても

 自主映画と言えば8ミリという時代があったが、これはお手軽なものという感覚からは程遠く、撮ることは勿論、見る=映写することも安易ではなかった。例えば、学生時代に文化祭などで映画を製作することは敷居の高いことで、稀に裕福な家の級友がいたりすれば、カメラの調達はできたとしても、その後のことを考えれば、経済的にも、技術的にも、撮影に踏み切ることは躊躇しなければならなかった。

 それを一変させたのは家庭用ビデオカメラの登場だった。当時のキャッチコピーで"パスポートサイズ"というのがあった。ビデオカメラは平面ではないから、ポケットにおさまるようなものではなかったが、写真用のカメラとたいして変わらないサイズ感には革命的なものがあった。運動会や家庭旅行では、手のひらに乗るビデオカメラで、思い出の撮影が可能となった。

 『PLAY 25年分のラストシーン』は、25年にわたる、思い出の映像を繋ぎ合わせて構成された物語である。

 はじまりは1993年のパリ。両親からビデオカメラを贈られた13歳のマックスは、家族や友だちたちとの日常を撮り始める。

 フィルムの時代には切ったり貼ったりの手作業による編集が必要だったが、ビデオではテープを一旦止めて、新たな場面で繋げば、あっという間の変身や瞬間移動が可能になる。マックスはビデオカメラをおもちゃのような手軽な趣味として、絵日記(=映像日記)として使いこなすようになる。

 映像は1998年のFIFAワールドカップやミレニアムカウントダウンといった、華やかな大イベントを映し出す。一方、日常の小さなパーティーや旅行の風景であったりする。それはどれも素通りする時間経過であっても、振り返ると大きな分岐点や節目であったりする。そのことに気づき向き合う。人生は後悔のパッチワークで出来ている。

 素敵なアイデアを巧みな仕掛けで紡いだ物語。そこに添えられるのは時代を彩った音楽。笑ったり、感傷に浸ったり、反発であっても構わない。受け止め方もひとそれぞれ、自由で良い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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