岐阜新聞 映画部

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笑って泣いて、ちょっと面白すぎる映画

2020年11月27日

喜劇 愛妻物語

©2020『喜劇 愛妻物語』製作委員会

【出演】濱田岳、水川あさみ、新津ちせ、大久保佳代子、坂田聡、宇野祥平、黒田大輔、冨手麻妙、河合優実、夏帆、ふせえり、光石研
【監督・脚本】足立紳

小気味良い悪態は、まるで大阪の夫婦漫才

 本作のタイトルを聞いてニヤリとする人は、かなりの映画通だ。脚本家で監督の足立紳さんが、自身と同じ境遇だった新藤兼人のデビュー作「愛妻物語」(1951年)にオマージュを捧げているのは間違いない。売れない脚本家を妻が支えていく点は同じだが、タイトルに「喜劇」と付けた、うぶでシャイで自虐的なシナリオは、大先輩にリスペクトしたオリジナル映画になっている。

 本作は9月5日付けの岐阜新聞webに掲載された足立監督へのインタビューで「内容はかなり現実に即した感じ。あんなに赤裸々に描いて大丈夫かと周りから言われました」ということから、まさに自伝と見ていいだろう。

 この映画、夫・豪太(濱田岳)に対する嫁・チカ(水川あさみ)の、一歩間違うと逆DVと言われかねない程の罵詈雑言が凄まじい。「死ね!、クズ!、ザコ!」と小気味良い悪態は、まるで大阪の夫婦漫才みたいだ。この夫婦の立場に共感する亭主諸君!私も連帯するのだ。トホホ、グスン・・・。

 わがままを許してくれるチカに、感謝はすれど逆ギレできるわけがない。自分の得意なこと(でも全く目が出ない)以外、なーんにも出来ないし、やらしても貰えない。情けない。

 そんな彼が、調子のいいプロデューサーに調子のいいこと言われて、久しぶりに嫁に得意顔をすれども、聞き飽きたと一蹴!ヘイコラしながらお願いベースで香川行きを頼む豪太が、愛おしくて仕方がない。

 ミーハーの私が、讃岐うどんブームの火付け役になったガイド本「恐るべきさぬきうどん」に触発され、家族で香川うどん食べ歩き2泊3日の旅をしたのが懐かしい。この映画、行く先々のシーンが、楽しかったあの頃を思い出させるのだ。

 豪太のダメ男ぶりは際立っているが、ごくまれに嫁に反論する。しかしその反撃は100倍返しでココロにズサズサくる。頑張れ、豪太!

 それにしても笑って泣いて、ちょっと面白すぎる映画である。傑作!

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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