権力に屈しなかった記者が見た真実の物語
2020年11月13日
赤い闇 スターリンの冷たい大地で
©FILM PRODUKCJA - PARKHURST - KINOROB - JONES BOY FILM - KRAKOW FESTIVAL OFFICE - STUDIO PRODUKCYJNE ORKA - KINO ŚWIAT - SILESIA FILM INSTITUTE IN KATOWICE
【出演】ジェームズ・ノートン、ヴァネッサ・カービー、ピーター・サースガード、ジョゼフ・マウル
【監督】アグニェシュカ・ホランド
変わることなき現代にも通じる報道の使命
1930年初頭、アメリカをはじまりとした世界的な経済危機が発生した。世に言う"世界恐慌"は瞬く間にヨーロッパへと広がり、深刻な混乱は世界中に伝播した。
1933年、イギリス人記者ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)の脳裏には、拭いきれない疑問の澱が溜まり続けていた。世界恐慌で多くの国が不況に苦しむ中、何故、ソビエト連邦だけは繁栄し続けているのか?
ソビエト連邦は、ロシア帝国で起こった2度にわたる大きな革命によって1917年に成立した共和国をもとにしている。マルクス=レーニン主義に基づく共産党による一党支配構造は、24年のレーニンの死後、権力を握ることになったスターリンによって、広大で強硬な連邦国家として増殖した。本当に社会主義国家は、世界恐慌にも打ち勝つ理想の桃源郷なのか?
ジョーンズは周囲の反対を押し切り単身モスクワへ乗り込むが、外国人記者を監視する当局の目は厳しかった。
『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』は、実在の記者ダレス・ジョーンズがソビエト連邦の隠された真実を取材し、西側諸国に告発した実話をもとにしている。
ダレス・ジョーンズは1905年イギリス・ウェールズに生まれた。早くにヒトラーを取材し、ナチスはいずれ世界の脅威になり得るという論説を発表したが、周囲からは笑いもの扱いされている。それでも真実に立つというジャーナリストとしての姿勢は折れることなく、映画で描かれるこのモスクワ行きにも如実に現れている。
ジョーンズは監視の目をかいくぐり、隠された闇の確信の地・ウクライナ行きの列車に乗り込む。
白く凍てつく地には、飢餓に喘ぐ名もなき人たちの悪夢のような光景があった。
監督のアグニェシュカ・ホランドは、ポーランドの現代史の闇を鋭く告発した作品を発表している女流監督である。それは、権力や体制に屈することのなかった主人公ダレス・ジョーンズの姿と見事にシンクロする。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。