岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

笑わせてるのに、涙が溢れてくる青春映画

2020年12月08日

実りゆく

©「実りゆく」製作委員会

【出演】竹内一希、田中要次、田中永真、橋本小雪、鉢嶺杏奈、島田秀平、小野真弓、三浦貴大、爆笑問題(特別出演)、山本學
【監督・脚本】八木順一朗

リンゴで美味しさを届け、漫才で爆笑を届ける

 本作の主役を務める竹内一希(実役)と田中永真(エーマ役)は、“まんじゅう大帝国”という名のコンビ名で活躍する、いわゆるお笑い第7世代(霜降り明星、EXIT、四千頭身など)の一員である。大学の落研出身の実力者で、爆笑問題のタイタンに所属している。

 話の骨子は、長野県の伊那地方・松川町のリンゴ農家の青年が、東京でお笑い芸人としてやっていくか、リンゴ農家を継ぐか、大いに悩み苦しみ、人生の決断を下すまでの話だ。モデルはタイタン所属の“松尾アトム前派出所”で、彼は松川町でのリンゴ栽培と東京での芸人を両立させている。

 タイタンのマネージャー・八木順一朗(日大芸術学部映画学科卒)が監督し、随所にタイタン芸人をチョイ見せした町おこしみたいな映画、仲間内で作ったお遊び映画だと思っていたら、大間違いだった。

 『実りゆく』は、愛情を注ぎ丹精込めて作った真っ赤なリンゴで全国に美味しさを届けるのと、ネタ作りに心血を注ぎ漫才で全国に爆笑を届けるのを、両方とも肯定したすがすがしい映画。若者が夢に向かって試行錯誤し、逃げだしたり諦めたりしながら、それでも前を向いて生きていく姿を描いた、爽やかな青春映画の秀作である。

 歌を歌う時はどもらないとはよく聞く話だが、台本がある漫才はどもらないとの発想がいい。吃音が原因で子どもの頃にいじめられていた実が、お笑い芸人になるというのも素敵だ。

 大洲七椙神社でのリンゴ奉納祭でなし崩し的に披露することになった、実とエーマの掛け合い漫才の面白さは、さすが旬の漫才コンビであるし、笑顔を見せたことがなかった父親(田中要次)がついにほほ笑んだシーンでは、観ているこちらは涙が溢れてしようがなかった。

 名優・山本學や長野県木曽山林高校出身の田中要次がしっかり脇を固め、まんじゅう大帝国の2人が違和感なく悩み多き青年を好演する。

 心地よく映画館を出られる、忘れ難き作品だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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