岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

マイルス・デイヴィスの音楽性と人間を描く会心のドキュメンタリー

2020年11月07日

マイルス・デイヴィス クールの誕生

【出演】マイルス・デイヴィス、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコック、カルロス・サンタナ ほか
【監督】スタンリー・ネルソン

どんなに挫折しても、ドラッグに溺れても、音楽だけには真摯

 私が映画ファンになりたての高校生の頃、毎度欠かさず聴いていた「淀川長治ラジオ名画劇場」。映画の語り部・淀川さんの名調子の間に流される数々の映画音楽の名曲を、カセットテープに録音して繰り返し聴いていた。中でも「死刑台のエレベーター」は他の映画音楽とは全く違ったカッコよさで、マイルス・デイヴィスの即興音楽は、私の心を魅了してやまなかった。

  本作は、天才ジャズトランペット奏者マイルス・デイヴィスの波乱万丈の人生を追ったドキュメンタリーだ。映像に残る本人の演奏や写真がふんだんに使われ、その凄みを体感できるのはもちろん、共演した有名ミュージシャンや恋人達の赤裸々な証言からは、みんな彼を愛してやまなかったことが浮かび上がる。本人の言葉をカール・ランブリーに語らせるのも興味深く、このドキュメンタリーに奥行きをもたせている。

  映画は、固定観念を突き破って様々な音楽ジャンルを取り入れ、いくつになっても新しい演奏スタイルに挑み続けてきた音楽家マイルス・デイヴィスの、華やかで輝かしい部分にスポットをあてると共に、人間マイルス・デイヴィスにも鋭く迫っていく。

  彼は裕福な黒人家庭に生まれたが、人種差別は家柄や貧富の差に関係なく、執拗に行われていた。彼の怒りの源である。

  成功とは表裏一体のドラッグとアルコール。何度も繰り返される依存性が悲しい。そしてジャンヌ・モローやフランシス・テイラー、ベティ・メイブリー・デイヴィスらとの女性関係。人間臭いエピソードは、破滅的な彼の人となりを抉り出していく。黒人差別は嫌悪しても、女性差別には鈍感で、パートナーのキャリアを奪っていくマイケル・デイヴィス。

  しかし、彼は音楽だけには真摯だ。どんなに挫折しても、ドラッグに溺れても、音楽だけは創造を続けてきた。

 「モダンジャズの帝王」マイルス・デイヴィスの音楽性と人間を描く、会心のドキュメンタリーだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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