岐阜新聞 映画部

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食物を捨てないためのヒント

2020年11月01日

もったいないキッチン

©UNITED PEOPLE

【出演】ダーヴィド・グロス、塚本ニキ、井出留美 ほか
【監督・脚本】ダーヴィド・グロス

新たな目線で気づくこと満載のドキュメンタリー

 個人的な話になるが、食に関する教育的な記憶は「茶碗に米粒を残さない」ということに始まる。戦中の食糧難を体験している私の親世代から受けた、食べ物を疎かにしないという教えである。

 日本の学校給食が始まったのは戦後の1946(昭和21)年とされるが、戦前にも貧困児童を対象にした無料の配給制度があった。戦中、戦後の困難な時代を体験した教訓の意味を込めて、学校給食の制度が全国に波及したのは47(昭和22)年で、日本の公共制度としては異例の速さで実施された。

 再び個人的な話だが、当時1年だけ通った保育園にもあったし、小学校でも最初から給食はあった。脱脂粉乳もソフト麺も知っているが、米飯は未体験である。給食は地域によって特色があり、共通の記憶にはならないようだ。定番と言われる"コッペパン"や"揚げパン"は記憶になく、食パン3枚が常だった。

 「残さない!」という教育は厳格だった。これも担任の先生によって差があるようだが、食べられない子どもは、給食時間を過ぎて昼休みに入っても机に座り続けた。

 指図め現在なら虐待だとか体罰だとかで問題にされたに違いない。現に、今は個人の嗜好が優先されるし、食物アレルギーなどデリケートな問題も絡む話なので、これは議論にもならない。

 『もったいないキッチン』は、もったいないという精神があった日本で、捨てない、おいしい料理を実践するため、キッチンカーで全国を行脚するロードムービードキュメンタリーである。

 監督でもあるオーストリア人のダーヴィド・グロスは、もったいないという言葉の生まれ故郷である日本へやって来て、食品ロスによって大量の食物が廃棄されていることを知る。その量は643万トン、国民一人あたりでおにぎりに換算すると、毎日1個分に相当する食べ物を捨てている。

 廃棄に立ちはだかるのは賞味期限という壁で、消費者はそこへ行けばいつも手に入る食べ物を期待する。売る側は安全性と期待に応える。この構図は消費社会には必然なのか?理想論では立ちゆかないジレンマに向き合おうと映画は語る。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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