岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

老いた未亡人の秘められた過去

2020年10月31日

ジョーンの秘密

© TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018

【出演】ジュディ・デンチ、ソフィー・クックソン、トム・ヒューズ、スティーヴン・キャンベル・ムーア、ベン・マイルズ
【監督】トレヴァー・ナン

誰にでもありうるかもしれない信念の行方

 夫に先立たれ未亡人となったジョーン(ジュディ・デンチ)は、イギリス郊外にある住宅街の自宅で、ひとり穏やかな余生を送っていた。

 2000年5月、ジョーンのもとに突然訪ねて来たのはM15の職員だった。

 M15はイギリスの保安局のことで、国内の治安維持に責任を担う情報機関であり内務大臣の直轄の組織だが、司法警察権はない。日本では公安調査庁が類似する組織だろう。

 ジョーンは逮捕されるが、これを行使するのはロンドン警視庁(スコットランドヤード)で、その容疑はソ連のKGBに核開発に関する秘密情報を漏洩したというスパイ行為だった。

 時は第二次世界大戦の只中、ケンブリッジ大学で物理学を学んだジョーン(ソフィー・クックソン)は、核開発の研究機関で研究員の職に就いていた。各国が核開発でしのぎを削る時代で、研究には緊張感が求められたが、ジョーンはその仕事にやり甲斐を感じてもいた。

 ジョーンの周辺には政治的な活動をする顔ぶれもいたが、熱気あふれる議論の場に参加はするものの、仕事柄、彼女にはそこからは距離をとるという警戒感が自然と働いてもいた。

 そんなジョーンに接近してくるのは、ロシア人のレオ(トム・ヒューズ)だった。そして、ふたりは恋に落ちる。

 逮捕されたジョーンには弁護士をする息子のニックが付き添うことになる。平凡な主婦であり、母親でもあるジョーンにかけられたスパイ容疑には懐疑的だったが、次々と明らかになる証拠を目にして、肉親としての信頼と自信も次第に揺らぎだす。

 『ジョーンの秘密』はジェニー・ルーニーが2013年に発表した同名の小説を原作にしている。物語は別名の女性の実話に基づいたものである。

 交錯する過去と現在。老いたジョーンの狼狽ぶりが強調されるが、彼女の信念が個人に収束され、ことの重大さに鈍感なことが怖い。気付かないうちに取り込まれてしまう危機は他人事ではないと、説いているのだろうか?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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