岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

楽しく愉快に食品ロスと向き合い、ヒントを求め考えていくドキュメンタリー

2020年11月01日

もったいないキッチン

©UNITED PEOPLE

【出演】ダーヴィド・グロス、塚本ニキ、井出留美 ほか
【監督・脚本】ダーヴィド・グロス

未来へのヒントが詰まったパワフルムービー

 私が幼い頃(昭和30年代後半)には、祖母から「ご飯粒を残すと目がつぶれる」と言われ、最後は飯椀にお茶を注いで食べるような教育をされてきた。日本ではお米を粗末に扱うことに嫌悪感がある。これは「MOTTAINAI」精神の根幹を表しているように思う。

 そんな文化のある日本だが、2018年に消費者庁から発表された我が国の食品ロス量は年間646万トン(売れ残り・規格外等の事業系357万トン、食べ残し等の家庭系289万トン)となっている。戦後の食糧難から、早くも1956年には食糧供給量が国民全体の摂取量を上回るのだが、1995年に食品表示義務が「製造年月日」から「消費期限・賞味期限」に切り替わったり、さらに1990年代から始まった賞味期限が残っていても小売店からメーカーへ返品される「3分の1ルール」の商慣習などにより、食品ロス大国になってしまった。

 何故こうなってしまったのか?本作を観る前または観た後に、これに至る背景を知っておいた方が理解が深まる。

 『もったいないキッチン』は、オーストリアの食材救出人ダーヴィドと相棒のニキが、軽トラに乗って日本全国を旅しながら現地の人と触れ合い、楽しく愉快に食品ロスと向き合い、ヒントを求め考えていくドキュメンタリーだ。

 大阪釜ヶ崎に運ばれてくる廃棄寸前の食品は、ホームレスの命を繋ぐ。

 東京台東区のお寺さんの精進料理は食材の全てを使う。福島の農家は長葱の花を生き返らせ、東京奥多摩のグループは昆虫を採取し調理して食べ、京都府綾部のお婆ちゃんは野草を収穫し、自給自足の生活をする。捨てるものは何も無いのだ。

 熊本県小国町の地熱エネルギーを使った料理、鹿児島県枕崎の鰹節産業に、鳥取県智頭町の発酵食品など、食を使った町おこしや地域再生にまで話は広がっていく。

 映画の最後は食材費0円のキッチンパーティ。未来へのヒントが詰まったパワフルムービーである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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