岐阜新聞 映画部

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老婆が若き頃スパイだった日々と最前線で活躍する男性との恋愛も描いたメロドラマ

2020年10月31日

ジョーンの秘密

© TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018

【出演】ジュディ・デンチ、ソフィー・クックソン、トム・ヒューズ、スティーヴン・キャンベル・ムーア、ベン・マイルズ
【監督】トレヴァー・ナン

彼女の行為は、正義だったのか?犯罪だったのか?

 化粧っ気のない80代の地味な老婆ジョーン・スタンリー(ジュディ・デンチ)。平凡で慎ましやかな人生を送ってきたと誰もが信じていた彼女が、若き頃はソ連のスパイだった!息子で弁護士のニック(ベン・マイルズ)も知らなかった驚愕の事実!

 本作は、彼女がどのような経緯で原爆の開発情報をソ連に渡したのかを現すと共に、最前線で活躍する男性との恋愛も描いたメロドラマでもあるのだ。

 映画は現在と過去を行き来しながら、ジョーンの視点で語られていく。秀才の若きジョーン(ソフィー・クックソン)は、友人のソニアに誘われて映画会に行く。見せられた映画は『戦艦ポチョムキン』。一見口当たり良く、平和を愛する学生たちの集会のようだが、実はコミンテルンの青年組織だったのだ。勧誘する常套手段である。

 しかし、1938年当時は、世界恐慌が尾を引く資本主義国に対し、計画経済のソ連を賛美する社会主義者も多く、スターリンの大粛清の実態は分かっていなかった。老嬢ジョーンは捜査官に「あなた方にはあの時代のことは判らない」と言う。真面目な彼女が、ソ連に対して希望を抱くのは、自然の流れだったのだ。

 ジョーンは組織とは距離をおきつつ、カリスマ性のあるリーダーで精力的な活動家のレオ・ガーリチ(トム・ヒューズ)に尊敬の念と恋心を抱く。さらに、彼女が籍を置く原爆開発プロジェクトリーダーのマックス・デイヴィス教授(スティーヴン・キャンベル・ムーア)とも恋仲となり、教授からは求婚される。映画の中盤はメロドラマだ。

 頑なに拒んできた原爆の開発情報に関するスパイ行為だが、ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下と被害状況を見て、東西の核の均衡が戦争の抑止力になると確信し、情報を提供する。政治的な見解はともかくとして、彼女の信念は80代の今でもゆるぎない。

 果たして彼女の行為は、正義だったのか?犯罪だったのか?判断は観客に委ねられた。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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