岐阜新聞 映画部

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富山市議による不正をあぶり出し、辞任に追い込んだ取材活動とその後の顛末を描いた、爆笑必死のドキュメンタリー

2020年10月19日

はりぼて

©チューリップテレビ

【声の出演】佐久田脩
【監督】五百旗頭幸男、砂沢智史

批評精神が鋭いドキュメンタリー

 本作は、2016年に富山のチューリップテレビが富山市議による政務活動費の不正請求をあぶり出し、14人を辞任に追い込んだ取材活動とその後の顛末を描いた、爆笑必死のドキュメンタリーだ。

 笑いどころは多岐にわたるが、もちろん主役は役者ぞろいの市議たちだ。当初はでかい顔をしてふんぞり返っていた「先生」が、取材班の地道な調査と丹念な取材によって証拠を突き付けられた時の、しらを切る様子。問い詰められて「他のみんなもやっている」「あんた方が騒ぎすぎる」と開き直る態度。逃げ切れないとなると、涙の謝罪と土下座のパフォーマンス。

 抗議の声を上げた傍聴席に向かって「退場を命じますよ」といった議長もアウト。不正追及していた議員も、女性職員の机を物色していたのが見つかりアウト。チャップリンの時代から、普段威張っている奴の哀れな姿は、笑いの常道なのである。

 次の役者は市長さん。報道陣から何を聞かれても、「答える立場にない」「制度上はその通り」と、いつでもどこでも何度でも同じ答えの繰り返し。不都合な事からは逃げの一手だ。

 まだまだ役者はいる。見て見ぬふりをして持ちつ持たれつの行政当局。ご親切に「こんな取材がきましたよ」と議員さんの耳に情報をリークする。そして注文を受ける業者。儲かるのなら、白紙の領収書なんて手軽にホイと渡すだけ。

 そして有権者。「あんなに謝ってるんだから許してあげたら」。これじゃ「先生」たち、反省なんかするわけない。

 で、最後の大物役者はジャーナリストそのもの。追及が一過性で終わってないか?結局政治が変わったのか?自問自答をするばかりだ。

 でもしかし、この映画にジャーナリズムの本質を見た。権力を監視する姿を。中央のマスコミに「あなたたちはそれでいいのか?」と言っているのだ。さらに有権者にも「政治に無関心でいいのか?」とも投げかける。批評精神が鋭いドキュメンタリーである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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