岐阜新聞 映画部

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余命宣告された男の生き方と終わり方

2020年10月10日

グッバイ、リチャード!

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【出演】ジョニー・デップ、ローズマリー・デウィット、ダニー・ヒューストン、ゾーイ・ドゥイッチ、ロン・リビングストン、オデッサ・ヤング
【監督・脚本】ウェイン・ロバーツ

甘いセクシーさと毒っ気 リチャードはデップのはまり役

 「残念ながら末期の肺がんです。治療をしなかった場合は余命は半年、治療を始めれば1年か1年半は生きられますが、かなりの苦痛を伴います。」主人公のリチャード・ブラウン(ジョニー・デップ)は物語の冒頭、医師からの告知にどん底に突き落とされる。

 大学で英文学を教えるリチャードは、妻と娘と何の不自由もない生活をしていたが、余命宣告を受けて家族への告白を葛藤の末に決意する。厳かな面持ちで帰宅すると、娘のオリヴィアから(オデッサ・ヤング)からレズビアンであることをカミングアウトされる。矢継ぎ早に、妻のヴェロニカ(ローズマリー・デヴィット)からは浮気の告白をされる。自由奔放な芸術家の妻のことだからと受け止めはしたものの、その相手は事もあろうに、大嫌いな大学同僚の学長だった。平静さも揺らいだ上に、自らの告白の機会も逸してしまう。現実はあくまで生々しい!リチャードは孤独だった。

 翌日、教壇に立ったリチャードは、生徒たちを前に学ぶことの真の意味を問い、自らの授業のやり方も改める決意のもと、それに従えない者はこの場を去れと、唐突に切り出す。多くの生徒は教室を後にするが、残った生徒たちはリチャードの豹変に興味津々だった。

 映画は余命宣告をされた時、「人は何を考え、如何に行動するか?」という重いテーマを突きつける。マリファナを吸い酒を飲みながら、闊達に意見をぶつける授業。ダイナーのウェイトレスとの情交。男子生徒に言い寄られての初体験。リチャードの信念「やりたいことをやりたいようにやる」には、既成概念やルールからの逸脱が顕著になるが、これはあくまでもリチャードのテストケースである。彼のやり方は野放図に乱暴で、これに引いてしまう反応も正当だ。しかし、そこに同調の強要はなく「あなたならどう考え、どう行動するか?」という問いかけにとどまる。

 ラスト間際に訪れる最後の決断に、リチャードは苦笑する。それにはついつられてしまうが、その直後には心の痛みに転ずる。それが映画に込められた毒の効力だと気づかされる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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