岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

無謀だが雄大な奇跡の物語

2020年09月26日

グランド・ジャーニー

© 2019 SND, tous droits réservés.

【出演】ジャン=ポール・ルーヴ、メラニー・ドゥーテ、ルイ・バスケス
【監督】ニコラ・ヴァニエ

渡り鳥の生態を知っているからこそできた驚異の撮影

 私が幼い頃、祖父母の家の軒先にはツバメの巣があった。春から夏にかけて南からやってくるこの渡り鳥が巣を作る家は縁起がよいとされ、玄関先が多少汚れても意に介さなかった。

 本作は、魔法と神話の国と言われる北欧ラップランドから姿を消してしまったカリガネガンを、14歳のトマ(ルイ・バスケス)が空を一緒に飛びながらナビゲーションし、フランス南部カマルグまで案内するという、無謀だが雄大な奇跡の物語だ。

 主人公の気象学者クリスチャン(ジャン=ポール・ルーヴ)のモデルであり本作の脚本を担当したクリスチャン・ムレクと、自身も冒険家で動物と人間の絆を描いたドキュメンタリーを数多く作ってきたニコラ・ヴァニエ監督。

 2人は、より多くの観客に観てもらいたいと、この話をドキュメンタリーではなく劇映画に仕立てた。物語の下敷きにしたのは、スウェーデンの女性作家セルマ・マーゲルレーヴの「ニルスのふしぎな旅」。

 日本でアニメ化もされている児童文学の名作で、妖精に小人にされてしまった14歳のニルスが、ガチョウのモルテンや女隊長アッカ率いるガンの群れと、一緒に空を飛びながら、スウェーデン中を旅するお話。

 父の本棚からこの本を手にしたトマは、卵から大事にふ化させた1羽だけ種類の違うひな鳥(カオジロガン)に「アッカ」と名付けたり、危機を助けてくれた少女に名前を聞かれ「ニルス」と答えたりする。

 渡り鳥は、父と子の絆を深め少年の成長を見つめていく。国境など関係なく大空を自由自在に飛んでいく姿は、人間の束縛からの解放を象徴する。少年少女にも分かりやすい不変のメッセージだ。

 映画は、軽量飛行機に乗ったトマと群れを成して飛翔するガンを接近して撮影し、あたかも目の前で飛んでいるかのように見せていく。これがほぼCGを使ってないのだ!監督と脚本家が渡り鳥の生態を知っているからこそできた、驚異の撮影である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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