岐阜新聞 映画部

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イラク戦争に加担したイギリス側の問題を、緻密かつ果敢に追求した社会派の力作

2020年09月21日

オフィシャル・シークレット

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【出演】キーラ・ナイトレイ、マット・スミス、マシュー・グード、レイフ・ファインズ
【監督】ギャヴィン・フッド

忖度ばかりの公務員に是非観てもらいたい映画

 2003年、アメリカ大統領ブッシュは「大量破壊兵器保持疑惑」という名目をでっち上げ、イラク侵攻を画策しはじめた。彼らは正当性を担保するため、国連安保理の決議を得ようとしたが、フランス、ロシア、中国が反対したため決議は得られず、追随するイギリスなどと「有志連合」という都合のいい枠組みを組織。3月、国際的な非難にも関わらず、イラク攻撃を開始した。

 イラク戦争の欺瞞性は、今までにも、アメリカの地方新聞社がメディアの立場で嘘を暴いていく『記者たち 衝撃と畏怖の真実』、戦争へ向かって暗躍するチェイニー副大統領の悪党ぶりを茶化した『バイス』など、彼らの非道を白日の元にさらした優れた映画があった。

 それらに続く本作は、この暴挙に加担したイギリス側の問題を、緻密かつ果敢に追求していった社会派の力作である。

 イギリス情報機関で働くキャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)が、ふと目にしたアメリカ政府からイギリス政府へのメールは、驚くべき内容だった。「国連の非常任理事国がイラク戦争を支持するかどうか、動向を探れ」。義憤に駆られた彼女は密かにメールをコピーし、信頼する元同僚の友人に渡す。

 その情報をつかんだメディアの裏取りや、スクープとして発表されてからのキャサリンの動揺など、映画はスリリングでリアルに展開していく。

 彼女は決して鉄の女ではなく、クルド難民だった夫や、次々に呼び出される同僚を見て、泣きそうになってしまう不安まみれの女性であり、早々と自白してしまう。

 司法に追われる彼女を守るのは、人権派弁護士ベン・エマーソン(レイフ・ファインズ)。国家機密をリークしたことは罪ではなく、違法である戦争を公示しただけなので無罪だとの法廷戦術をとる。

 「私は政府に仕えているのではない。国民に仕えている」。

 全体の奉仕者であることを忘れている、忖度ばかりの公務員に是非観てもらいたい映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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