岐阜新聞 映画部

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Meet somewhere

ネット配信の卵から生まれた怪獣”新エイガ"

2020年09月20日

8日で死んだ怪獣の12日間の物語 劇場版

©日本映画専門チャンネル/ロックウェルアイズ

【出演】斎藤工、のん、武井壮、穂志もえか、樋口真嗣
【監督・脚本】岩井俊二

現場が止まった時に映画監督ができること 発信の意義とミニシアターへの支援

 世界が止まった。巨大な隕石が落下したような吃驚仰天なことが起こったわけではなく、目には見えないウィルスが、静かに浸透感染したことで始まった。一気にではなく、徐々に世界の各地が…。

 日本では大陸の出来事、対岸の火事だと思っていたが、それが接岸された巨大な船でのこととなれば、他所ごとではなくなった。自粛とか中止とかは昔聞いたことがあったが…。大相撲は無観客で、プロ野球もJリーグの開幕も延期され、東京五輪の延期も承認された。何となくの楽観が危機に変化したのは、志村けんさんの死が伝えられた3月の終わり頃だった。

 東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡に緊急事態宣言が出されたのは4月7日。愛知、岐阜が独自の宣言を発令したのは遅れて4月10日。その日、映画監督の大林宣彦氏が亡くなった。最後の映画になってしまう『海辺の映画館 キネマの玉手箱』の公開初日だったが、3月末には延期が決定していた。全国に緊急事態が拡大したのは1週間後の4月16日。そして、映画館も止まった。

 映画館も止まり、制作の現場も止まった。映画に限らず、アーティストたちはそこで模索を始める。密接密集はできない。人が集まる場はなく、個に限定された。

 『8日で死んだ怪獣の12日の物語 劇場版』は、ネットの動画配信サイトYouTubeで、5月20日から12日間配信された動画をもとにしている。

 世界が新型コロナウイルス感染防止の為の闘いの最中。サトウタクミ(斎藤工)は、アーティスト活動を停止して自宅での自粛生活に沈んでいた。この日、通販で買った怪獣の卵が届く。タクミは、その飼育の様子を動画配信することになる。

 映像では、今は見慣れたリモートによる分割画面が会話として登場する。リモートという言葉もいつの間にか一般化したが、この会話には、デジタルの世でもかつての衛星中継のような時差があるのが面白い。怪獣の卵はウルトラセブンに登場するカプセル怪獣である。残念ながらこの記憶が儚く思い入れがないことが、映画に入り込めない障害になった。配信動画は“家見”が向いている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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