岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

スキャンダラスな場面を封印した社会派の秀作

2020年09月14日

グレース・オブ・ゴッド 告発の時

©2018-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-MARS FILMS–France 2 CINÉMA– PLAYTIMEPRODUCTION-SCOPE

【出演】メルヴィル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルロー、ジョジアーヌ・バラスコ、エレーヌ・ヴァンサン
【監督・脚本】フランソワ・オゾン

題材により演出タッチを変えるF・オゾン監督の引き出しの多さに感心

 フランスで現在も裁判が進行中の、神父による児童への性的虐待事件を描いた実録映画である。

 神父の子どもへの性的虐待事件は、アカデミー賞の作品賞に輝いた『スポットライト 世紀のスクープ』でも描かれていた。近年ようやくキリスト教社会で明るみになったこの深刻な社会問題は、教会の隠蔽体質によって長く闇の中にあった。

 テレビ局のCEOによる女性キャスターへのセクハラを描いたアメリカ映画『スキャンダル』と同じように、被害者のひとりが長い沈黙を破って訴えを起こすことで、他の被害者たちも次々と勇気を出して名乗り出るというストーリーを、鬼才フランソワ・オゾンはスキャンダラスなシーンを封印し、大人になった被害者たちのモノローグと証言によって、衝撃の事件の真相を正攻法に描いている。

 被害者3人のエピソードをリレー形式で繋いだ構成から、それぞれの家族の受け止め方の違いがあぶりだされ、作品に深みを与えている。

 題材により演出タッチを変える、オゾン監督の引き出しの多さに感心させられる社会派映画の秀作だ。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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