岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

63歳でひとりだちするマリーに対し、監督は温かく祝福する

2020年09月07日

ブリット=マリーの幸せなひとりだち

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【出演】ペルニラ・アウグスト、ペーター・ハーバー、アンデシュ・モッスリング、マーリン・レヴァノン
【監督】ツヴァ・ノヴォトニー

自立とは自分の意志で生きること

 スウェーデンの専業主婦率は2%(2014/6/21日経記事より。ちなみに日本は38%)だそうだ。女性が働くのが当たり前の国で専業主婦を貫くのは、よほどのお金持ちか変わり者と見られるだろう。

 本作の主人公ブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)は、40年間主婦一本。決まった時間に起床し、掃除は手順通りに完璧にこなす。料理は得意で食卓を彩るが、いつも仏頂面で、夫が好きなサッカーや旅行に興味は無く、会話も無い。そんなある日、夫が心臓発作で倒れたと聞き病院へ駆けつけると、そこには夫の愛人がいた!

 すぐに家を出たマリーが、63歳にしておそらく初めての仕事は、田舎のユースセンターの管理人兼弱小少年サッカーチームのコーチ。何事にも真面目に取り組むマリーが、得意の掃除をこなしながら、どうやってサッカーのコーチをやっていくのかが見どころだ。

 子どものいないマリーは、日々の家事をルーティーン化し、それを完璧にこなすことで自分の意志を押し殺してきた。が、結果は夫の不貞。もともと専業主婦に対する評価がとても低いお国柄か、彼女の完璧な家事は誰にも認められない。

 そんな彼女の後悔と仏頂面は、家を出て仕事に就くことにより、チョット生意気だけど可愛い子どもたちや、優しい周りの仲間に助けられて、希望と笑顔に変わっていく。誰かに頼られ必要とされ存在価値を認められる喜びは、人を再生させるのだ。

 それもこれも、マリーが自己決定したからである。自立とは自分の意志で生きること。40歳の女性監督ツヴァ・ノヴォトニーは、63歳でひとりだちするマリーに対し、温かく祝福する。今までの40年間も無駄ではないし、これからスタートを切る人生は、みんなと関係性を持ち助け合いながら生きていけばいいのだと。

 でも、夫も気の毒だ。愛人を作るのはいかんけど、マリーさん、もうちょっと笑顔でいてあげてほしかった。夫に同情いたします。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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