岐阜新聞 映画部

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野望とプライドが渦巻く電流戦争

2020年08月21日

エジソンズ・ゲーム

©2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

【出演】ベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、トム・ホランド、ニコラス・ホルト
【監督】アルフォンソ・ゴメス=レホン

天才発明家エジソンのイメージを消し去る人間ドラマ

 『エジソンズ・ゲーム』は、エジソンとテスラによる、電力の送電方法や直流と交流の主導権争いの攻防を描いている。既に歴史上の結果は出ている話だが、スピーディーでサスペンスフルな展開はその事実を忘れさせる。

 トーマス・アルバ・エジソンは1847年、アメリカ・オハイオ州に生まれた。生涯に1300にも及ぶ発明と技術革新を行った人物として、その名を知らない人はいないであろう。蓄音器、白熱電球、そして活動写真があり、フランスのリュミエール兄弟と共に”映画の父”とも呼ばれている。また、努力の人とか不屈の人などの異名の他にも、自らの発明の権利を守るため訴訟という手段を厭わなかったことから”訴訟王”とも呼ばれた。この映画では、そういうエジソンのいくつかの違う顔が随所に現れる。

 映画の序盤、白熱電球に関わるシーンが登場する。白熱電球の発明はエジソンによるものではなく、ジョセフ・スワンによって成された。エジソンは耐久性が極めて弱かったフィラメントの改良開発に心血を注いだ。中国製の扇子に使われていた竹材から、日本の京都・八幡の竹にたどり着く過程は、一気に物語に引き込まれる。発明や技術革新は偏執という狂気と紙一重で成り立っていることを知る。

 エジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)が先行していた送電方法に割り込むかたちで、実業家ジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)は交流による送電の実演会を成功させる。このニュースに激怒したエジソンは、交流方式の危険性を強調するネガディブ・キャンペーンに打って出る。

 映画の本筋はビジネス戦争に移行する。世論を巻き込んだ情報戦、訴訟を絡めた駆け引き、野望とプライドが渦巻く不毛な闘いは続く。

 闘いの勝敗はかなり早い段階から見えていた。それはエジソンの周辺でも然り。最大のネックはコストの差だった。ビジネスで最優先されるのはお金の問題なのだ。エジソンの孤立は次第に顕著になる。

 『エジソンズ・ゲーム』は伝説的な天才発明家エジソンのイメージを消し去る。通り一遍の伝記ものとは一線を画す、人間くさいドラマである。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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