岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

相変わらずのセンスあふれるセリフや鋭い人間観察

2020年08月14日

レイニーデイ・イン・ニューヨーク

Photography by Jessica Miglio ©2019 Gravier Productions, Inc.

【出演】ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメス、ジュード・ロウ、ディエゴ・ルナ、リーヴ・シュレイバー
【監督・脚本】ウディ・アレン

その年のアメリカ映画の水準を推し量る道標となってきたアレン作品

 私が大学の映研仲間の刺激を受けて、ファンからマニアに進化しつつあった1978年、アカデミー賞作品賞を取ったのが『アニー・ホール』。小粋でウィットに富んだセリフの応酬が映画マニア駆け出しの私にはちっとも馴染めず、ウディ・アレン監督とは不幸な出会いで始まった。

 しかし、ほどなくして傑作『マンハッタン』(1979年)に遭遇。それから40数年間、ほぼ年1本公開されるアレン作品のマイベストテンの順位は、私にとってその年のアメリカ映画の水準を推し量る道標となってきた。何があってもブレないアレン作品。

 当年85歳のウディ・アレン監督通算50本目の本作は、80歳のイタリアの名匠ヴィットリオ・ストラーロを撮影監督に迎えた3本目の作品。遺作の予感など全くなく、相変わらずのセンスあふれるセリフや鋭い人間観察からは、枯れた部分が一切ない。

 主演の2人、ギャツビー役のティモシー・シャラメは25歳、アシュレー役のエル・ファニングは22歳。アレンにとっては孫のような当代きっての青春スターを等身大で使い、いつの世代でも変わらないすれ違い恋愛ドラマを、軽やかに気持ちよくスケッチしている。

 お金持ちの息子でニューヨーカーのギャツビーは、お節介な母、ゲスな笑い声の兄の婚約者、学生時代にいちばん嫌いだった映画を撮ってる友人など、逃げ出したいことだらけだ。

 一方の田舎娘のアシュレーも、有名な映画監督のローランドや、プロデューサーのテッド、大スターのヴェガに出会って舞い上がっているが、お上りさんよろしく無防備このうえない。

 そんな2人のチョッピリ苦い恋を、ティモシー・シャラメも劇中で歌うジャズスタンダード「Everything Happens To Me」の曲に乗せて、ニューヨークの新旧オシャレスポットを巡りながら、軽快に爽やかに描いていく。

 柳ケ瀬の映画館にはピッタリの、お洒落でスマートな恋愛映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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