岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品アルプススタンドのはしの方 B! “アルプススタンドのはしの方”が青春の輝きに満ちている 2020年08月09日 アルプススタンドのはしの方 © 2020「On The Edge of Their Seats」Film Committee 【出演】小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり、平井珠生、山川琉華、目次立樹 【監督】城定秀夫 【脚本】奥村徹也 相変わらず女性を描くのが上手い城定監督 城定秀夫監督はピンク映画で大車輪の活躍を見せる人物であり、私の非常に好きな監督のひとりでもある。脚本の構成力とそれを的確に映像化し、面白く見せることに長けている。そして、キャラクター造形が独特でありながら魅力的で、映画の中の世界できちんと“生きている”と観客に感じさせるのである。特に女性の描き方はピカイチ。そんな城定秀夫監督が、文字通り“アルプススタンドのはしの方”で男女何人かが喋っているだけの青春映画を撮った。当然、期待に胸膨らませながら観たわけで、期待を全く裏切らない映画に仕上がっていた。 「しょうがない」が口癖のあすは(小野莉奈)と彼女に気を遣うひかる(西本まりん)。努力をあきらめてしまった藤野(平井亜門)と真面目で成績優秀、いつも1人の宮下(中村守里)。この4人の会話がストーリーを進めていく。そして、そこにいつもみんなの中心にいる久住(黒木ひかり)と誰にでも暑苦しく絡む厚木先生(目次立樹)が関わることで4人に少し変化が生まれる。 その変化とは高校、大学生の時期が“しょうがない”を“しょうがない”で済ませなくても良い最後の時期であることに気付いていくこと。大人になれば“しょうがない”と受け入れなければならないことだらけになるわけだが、学生は違う。特に高校生以降は挫折も増えるが、再チャレンジしたり、別のことに打ち込んだり、時には反発もできる。そのことに気付いた時、彼らは再び熱くなれるのだ。本作はそんな青春の輝きに満ちているのである。 そして、真面目で成績優秀な宮下のキャラクター造形はいかにも城定作品らしい。通常、この手のキャラクターは常に1人で感情をほとんど表に出すことのない人物として描かれることが多い。しかし、宮下は野球部男子に片思い中で、その男子の彼女を嫉妬心から無視するという女性としての感情もキッチリ描いている。一方のあすはと親友ひかるの関係性も女性同士の複雑なもの。相変わらず女性を描くのが上手い城定監督である。 ほぼワンシチュエーションながら人物を深く掘り下げた奥村徹也氏の優れた脚本とキャラクター造形。そして、キャスト陣のあふれる魅力と透明感を上手く引き出しつつ、的確なカメラワークで一切退屈しない作品に仕上げた城定監督の演出。それらが相乗効果となってさわやかな青春映画へと昇華した本作。“アルプススタンドのはしの方”が青春の輝きに満ちている。 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:天野 雄喜 中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2021年10月13日 / 【思い出の映画館】千日前セントラル(大阪府) 戦後の活気ある商店街でアメリカ映画を送り続けた。 2023年09月13日 / Stranger(東京都) 好きな映画を語り合える東京下町のミニシアター。 2018年05月23日 / 本渡第一映劇(熊本県) この町で映画を観たいという島の人々の声で復活した映画館 more
相変わらず女性を描くのが上手い城定監督
城定秀夫監督はピンク映画で大車輪の活躍を見せる人物であり、私の非常に好きな監督のひとりでもある。脚本の構成力とそれを的確に映像化し、面白く見せることに長けている。そして、キャラクター造形が独特でありながら魅力的で、映画の中の世界できちんと“生きている”と観客に感じさせるのである。特に女性の描き方はピカイチ。そんな城定秀夫監督が、文字通り“アルプススタンドのはしの方”で男女何人かが喋っているだけの青春映画を撮った。当然、期待に胸膨らませながら観たわけで、期待を全く裏切らない映画に仕上がっていた。
「しょうがない」が口癖のあすは(小野莉奈)と彼女に気を遣うひかる(西本まりん)。努力をあきらめてしまった藤野(平井亜門)と真面目で成績優秀、いつも1人の宮下(中村守里)。この4人の会話がストーリーを進めていく。そして、そこにいつもみんなの中心にいる久住(黒木ひかり)と誰にでも暑苦しく絡む厚木先生(目次立樹)が関わることで4人に少し変化が生まれる。
その変化とは高校、大学生の時期が“しょうがない”を“しょうがない”で済ませなくても良い最後の時期であることに気付いていくこと。大人になれば“しょうがない”と受け入れなければならないことだらけになるわけだが、学生は違う。特に高校生以降は挫折も増えるが、再チャレンジしたり、別のことに打ち込んだり、時には反発もできる。そのことに気付いた時、彼らは再び熱くなれるのだ。本作はそんな青春の輝きに満ちているのである。
そして、真面目で成績優秀な宮下のキャラクター造形はいかにも城定作品らしい。通常、この手のキャラクターは常に1人で感情をほとんど表に出すことのない人物として描かれることが多い。しかし、宮下は野球部男子に片思い中で、その男子の彼女を嫉妬心から無視するという女性としての感情もキッチリ描いている。一方のあすはと親友ひかるの関係性も女性同士の複雑なもの。相変わらず女性を描くのが上手い城定監督である。
ほぼワンシチュエーションながら人物を深く掘り下げた奥村徹也氏の優れた脚本とキャラクター造形。そして、キャスト陣のあふれる魅力と透明感を上手く引き出しつつ、的確なカメラワークで一切退屈しない作品に仕上げた城定監督の演出。それらが相乗効果となってさわやかな青春映画へと昇華した本作。“アルプススタンドのはしの方”が青春の輝きに満ちている。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。
語り手:天野 雄喜
中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。