岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

奴隷から英雄となった女性の伝記

2020年08月03日

ハリエット

©2019 Focus Features LLC.

【出演】シンシア・エリヴォ、レスリー・オドム・Jr 、ジャネール・モネイ
【監督】ケイシー・ レモンズ

逃走の道先案内人=車掌ハリエットは失敗しなかった

 タイトルロールである”ハリエット”は1820(21年説あり)年、アメリカ・メリーランド州ドーチェスター郡に奴隷の両親の元に生まれた。その時の名前はアラミンタ・ロスというが、映画の中では通称のミンティと呼ばれる。後(1844年頃)に、自由黒人のジョン・タブマンと結婚して、ハリエット・タブマンとなった。

 自由黒人という概念は様々あるが、そのひとつに年季明けの功労代償があった。映画の冒頭、農場主であるプローダス家に自由黒人となることを直訴するが、無下に拒絶されるシーンが登場する。人を所有物として扱う、まさしくこれが奴隷という制度であった。

 時は1849年、強権的だったプローダス家の家長が亡くなったことをきっかけに、経営難の農場は奴隷の売却を迫られる。ハリエットは渋る夫をふり切るようにして、農場=村からの単身での脱出を決意する。資金源である所有物の逃亡をプローダス家は見過ごすはずもなく、ハリエットに執拗な追手を掛ける。北を目指す途中、クェーカー教徒の助けを受け、何とかフィラデルフィアに到着する。

 そこには、逃亡する黒人を援助救済する”地下鉄道”という組織があり、ハリエットはそこで働くことになる。その活動は南部の奴隷たちを北へ、さらにはカナダまで誘導する役目で、これは”車掌”と呼ばれた。

 彼女には突然、睡眠状態になるナルコレプシーという障害があった。これは奴隷主から受けた暴力による頭部の怪我が原因だった。決断を迫られる時、彼女はこの発作からの神の啓示を受けた。

 ハリエットを演じたシンシア・エリヴォはイギリス出身の女優で、シンガーソングライターとしても活躍している。本編でも、ゴスペルを思わせるような歌で心象を表現する試みがみられるが、これが中途半端に終わっているのが惜しまれる。

 ハリエットは今年、アフリカ系アメリカ人として初の20ドル札の肖像デザインとなる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る