詰めこみ過ぎの後遺症でオーラも霞んで

　2000年、ある日、セルステとエレノアの姉妹が通うハイスクールで、同級生による銃の乱射事件が発生する。意味深な会話が犯人とセレステの間で交わされた直後、セレステは銃弾に倒れる。ショッキングな冒頭。

　急死に一生を得たセレステは、妹のエレノアと犠牲者追悼のための歌をつくり、式典で披露する。その追悼曲はメディアに取り上げられ、異例の大ヒットとなり、セレステは“ポップスター” に上りつめていく。

　それから18年。セレステ（ナタリー・ポートマン）の人気は、絶頂であった時代を過ぎ、陰りが見えはじめていた。それには、スキャンダルとゴシップが大きく影響していた。それまで彼女を支えてきた敏腕マネージャー（ジュード・ロウ）もいささか手を焼く始末だった。

　そして、今、再起をかけたツアーのステージに立とうとしていた。その矢先、遠く離れたクロアチアのリゾート地で、銃の乱射事件が起こる。その犯行の様子はSNSで生配信され、その時、犯人が使用していた覆面が、セレステがMVで使ったものだったことから、マスコミは騒めき立つことになる。

　ナタリー・ポートマンは、13歳のデビュー作『レオン』（リュック・ベッソン監督/94年=日本公開95年）でいきなりのブレイクを果たし、『ブラック・スワン』（ダーレン・アレノフスキー監督/2010年=日本公開11年）では、アカデミー主演女優賞に輝いた。若くしてスターになった境遇が、セレステのそれと重ならないこともないが、ボンデージファッションとメタルの装飾品を身につけたポップスターのイメージはない。しかし、復活のステージで見せるオーラに彩られた歌唱ぶりはさすがと思わせる。

　セレステとエレノア姉妹の確執は何なのか？ 若くしてもうけた娘との関係は？ 繰り返し登場する銃乱射事件が意味するものは何か？ 多くを詰めこみ過ぎて不可解なまま、もつれた糸が解けることはない。ど派手に輝く圧巻の舞台もすっきりしないままではノレないのが残念だ。