岐阜新聞 映画部

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溢れる思いを全部映画にぶちこんでしまい、中途半端になってしまった失敗作

2020年07月31日

ポップスター

©2018 BOLD FILMS PRODUCTIONS, LLC

【出演】ナタリー・ポートマン、ジュード・ロウ、ラフィー・キャシディ、ステイシー・マーティン、ジェニファー・イーリー
【監督】ブラディ・コーベット

たとえ技術的には稚拙でも、燃えたぎるメッセージをぶち込んでくる映画が好きだ

 何か新しい事をやろうとして、結果上手くいかなかったり、破綻している映画は多々ある。本作は、若きブラディ・コーベット監督が、あれも言いたいこれも描きたいと溢れる思いを全部映画にぶちこんでしまい、中途半端になってしまった失敗作である。でも嫌いではない。

 私は、要領よく小器用にまとめられた作品よりも、たとえ技術的には稚拙でも、燃えたぎるメッセージをぶち込んでくる映画が好きだ。

 この映画、邦題は「ポップスター」であるが、原題は「Vox Lux」。ラテン語で「光の声」という意味らしいが、このカッコつけた題名からして疑問。私には意味がよく分からない。邦題も苦し紛れで内容とはずれている。

 第1章は2000年。コロンバス高校銃乱射事件(1999年)をモチーフにした惨劇により、少女時代のセレステ(ラフィー・キャシディ)は九死に一生を得る。ここで1回目のエンドロール。狙いすぎで意味がよくわからんが、映画の進行の邪魔はしてない。

 そして、鎮魂歌みたいにして作った曲が全米で大ヒットする。悲しくも感動的ではある。が、大スターになった栄光の時代は描かれない。低迷期を強調するには、絶頂期を入れるのが王道だと思うが、新機軸なんだろう。

 第2章は2017年。わがままで業界ずれしている31歳のセレステ(ナタリー・ポートマン)。世間から誹謗中傷を浴びて傷ついてはいるが、栄光時代の伝手を頼りに何とか生き延びている。ここら辺の描写のうまさはアメリカ映画の伝統だ。

 そこへ、クロアチアの銃乱射事件の犯人が、セレステのMVのマスクを被っていた件と重なる。2000年との対比はいいが、クロアチアに失礼だ。

 ラストにセレステの圧巻のステージがあるが、映画は全体がちぐはぐで、スター誕生の話なのか社会派なのか、中途半端この上ない。2回目のエンドロールは無音の上、逆順に出る!苦笑。でもパワーは最高、好きな映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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