岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

コロナの時代、これからの生き方を考えるヒントがもらえる映画

2020年08月04日

花のあとさき ムツばあさんの歩いた道

©NHK

【出演】小林ムツ、小林公一 ほか
【監督・撮影】百崎満晴

「新日本紀行」が蘇ったような懐かしさ

 私が中学生のころ、NHKのドキュメンタリーで日本各地の原風景を訪ねる「新日本紀行」という番組があった。冨田勲のテーマ音楽と美しい言葉で綴るナレーションが素晴らしく、私の知的好奇心を満たしてくれた。

 本作を観ていると、時間をかけ土地にどっしり根を張った丹念な取材と、折り目正しい落ち着いた映像で、あの紀行番組が蘇ったような懐かしさがあった。土地に生きる名もなき無名人たちの穏やかな生き様に、最後まで魅入ってしまった。

 スクリーンに映し出される秩父の山里の四季はあくまでも美しく、公一さん・ムツさんの老夫婦や、同じ集落に住む武さん・ヨネさんなどの顔はみんな柔和で、みんな働き者である。公一さんとムツさんが丹精込めて作ってきた畑地の耕作をやめるにあたり、せめてもの恩返しという事で、段々畑に花や樹木を植えていく。人生の終い支度ということだ。

 あじさい、もみじ、福寿草、色とりどりの花々は、緑の山をカラフルに染めていく。

 過ぎ行く穏やかな時間を写し取った美しい映画であるが、厳しい現実にも目を向ける。

 ムツさんもご先祖様も、傾斜の激しい痩せた畑を開墾し、獣害や気候条件の厳しさと闘いながら、必死に生きてきた。農作物だけでなく林業や養蚕も盛んにやった。

 高度経済成長で産業構造が変わってくると、生活に不便で仕事も無い中山間地域から都会へ、人口がどんどん流出していった。残された集落は高齢化が進み、社会的共同生活の維持が困難になってくる。住民の半数が65歳以上の集落を「限界集落」と呼び、全国的に放置できない問題になってきた。

 ムツばあさんが住む秩父市吉田太田部楢尾の集落は、まさにこの「限界集落」であり、最後は「消滅集落」になってしまった。これは仕方ないことなのか?新自由主義の競争の中で、ストレスいっぱいに働くことが幸せなのか?

 コロナの時代、これからの生き方を考えるヒントがもらえる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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