岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

不等辺三角関係ロマンチックコメディ

2020年07月28日

15年後のラブソング

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【出演】ローズ・バーン、イーサン・ホーク、クリス・オダウド、アジー・ロバートソン、アユーラ・スマート、リリー・ブレイジャー、フィル・ディヴィス、デニース・ゴフ、リリー・ニューマーク
【監督】ジェシー・ペレッツ

大人になりきれない中年たちの新しい第一歩

 音楽=ミュージシャンに即発される若者を主人公にした映画はよく見かける。音楽には人生の岐路に立つ人の背中を押す魔力がある。

 『15年後のラブソング』はこの定石を踏まえてはいるが、設定はかなり奇抜なのが面白い。

 イギリスの港町サンドクリフで暮らすアニー(ローズ・バーン)は、町の美術館で学芸員の仕事につき、企画展の準備に忙しい。長年一緒に暮らすパートナーのダンカン(クリス・オダウド)との生活は、“安定”という形容がぴったりする、言い換えれば何の不満があるわけでもないのだが、何となくモヤモヤは消えない。その原因はダンカンが傾倒する、ダンカン曰く”伝説のロックシンガー“タッカー・クロウ(イーサン・ホーク)にある。90年代に忽然と表舞台から姿を消したタッカーへのダンカンの心酔ぶりは、アニーからすれば、“キモい”に分類されるものだった。

 ある日、ダンカンが運営するタッカーのファンサイトにアクセスしたアニーは、素直な自己分析を書き込む。それは痛烈な酷評であった。

 アメリカ・ニュージャージー州の田舎町で隠遁生活をしているタッカーは、居心地の悪い称賛に彩られた自らのファンサイトに、突然投げ込まれた異物である酷評を目にする。そして「素直な感想をくれたことを感謝する」と返信する。それを受け取ったアニーは、はじめ半信半疑だったが、ふたりのメールのやり取りは、思わぬ方向へと進展していく。

 アニーを演じたローズ・バーンは、疲弊した日常から、次第に少女に変貌する様子が可愛い。

 タッカーを演じたイーサン・ホークは、ロックシンガーの面影もなく、腹まわりの肉がだらしない生活を象徴するような中年ぶりを発揮しているが、アニーとの逢瀬で見え隠れするチャーミングさは持ち味といえど秀抜。そして、シンガーらしく歌声も披露している。

 監督のジェシー・ペレッツはミュージシャン出身ということもあり、ロマンチックコメディに見事な音楽の花を添えている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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