岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

自分の母親世代を描きつつ、私たちも変わろうよと願うアベヤ監督

2020年07月27日

グッド・ワイフ

© D.R. ESTEBAN CORP S.A. DE C.V. , MÉXICO 2018

【出演】イルセ・サラス、カサンドラ・シアンゲロッティ、パウリーナ・ガイタン、ジョアンナ・ムリーヨ、フラビオ・メディナ
【監督・脚本】アレハンドラ・マルケス・アベヤ

表面的な人間関係を維持しようとする愚かさは、滑稽でありみっともない

 メキシコは、豊富な石油資源を背景にして1940年代からは政治や経済が安定し、その象徴として1968年にはメキシコオリンピックが開催された。1970年代の世界的な二度のオイルショックでは産油国として潤っていたが、その反動による原油価格の下落から、1982年には対外債務が急増し債務危機に陥ってしまった。

 本作は、1982年生まれの女性監督アレハンドラ・マルケス・アベヤが、自分が生まれた年に起こった経済危機を丹念に調べ、セレブ階級の女性たちの考えや立ち居振る舞いが40年弱立ってもちっとも変わってないことを嘆いた映画だ。

 ゴージャスなファッションに身を包み、瀟洒な豪邸でホームパーティーを開くセレブ妻たち。コミュニティのリーダー格のソフィア(イルセ・サラス)は、さりげなさを装いつつライバルに優位性を示していく。噂話に明け暮れる彼女たちの中に、庶民の言葉を使うアナ・パウラ(パウリーナ・ガイタン)が参入してくる。あからさまに毛嫌いするソフィア。しかし、裕福な生活は夫によるものであり、夫の地位や稼ぎが彼女たちの立ち位置を決めているという事実。アベヤ監督は、こういった女性の前近代的な価値観を「気が付けよ!」とばかりに笑い飛ばしていく。

 債務危機による夫の会社の崩壊。自分の人生を男性にゆだねていたソフィアは、自分のあずかり知らぬ所で、クレジットカードの停止に始まり、小切手の不渡り、家や車の差し押さえに見舞われる。その現実を受け入れがたいソフィアは、みんなの前ではそ知らぬふりをして気丈に振る舞うが、コミュニティのみんなは噂も含めて知っている。彼女だってみんなが知っていることは分かっていても、それを認めることは辛いのだ。表面的な人間関係を維持しようとする愚かさは、傍目には滑稽でありみっともない。

 アベヤ監督が描く世界は、自分のお母さんの世代を描きつつ、私たちも変わろうよと願っているのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る