岐阜新聞 映画部

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故郷に戻ったシェイクスピアの最後の3年間を描いた、重厚な家族劇

2020年07月18日

シェイクスピアの庭

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【出演】ケネス・ブラナー、ジュディ・デンチ、イアン・マッケラン、キャスリン・ワイルダー、リディア・ウィルソン
【監督】ケネス・ブラナー

これは悲劇というより喜劇だ

 イギリスの偉大な劇作家で詩人のシェイクスピア(1564-1616)は、37本の戯曲と6本の詩集(諸説あり)で知られているが、彼自身の手紙や日記・直筆原稿などは一切残ってない。生涯が謎だからこそ、別人説などを含め、彼の私生活や人となりが自由に想像できる。

 本作は、世界的なシェイクスピア俳優で監督のケネス・ブラナーが、劇作家を引退して故郷に戻ったシェイクスピアの最後の3年間を描いた、重厚な家族劇だ。とっつきにくいコスチュームプレイではなく、世の男性ビジネスマンに共感多々の映画となっている。

 地元で秀才だったシェイクスピアさんは、18歳だった1582年、8つ年上の姉さん女房・アンとできちゃった婚、一男二女を授かる。故郷で何らかの仕事をしたあと1592年、お芝居(俳優・脚本)の仕事で身を立てようと転職を決意、単身ロンドンに進出する。

 その後の活躍は華々しく、同業者から嫉妬されるほどの名声を得た上、グローブ座の共同株主にまでなる。実力があってこそだが凄い出世である。

 約20年間のロンドン劇壇での大活躍のあと、1613年に引退、故郷の家族の元に戻る。

 「こんなに頑張ってきたんだから、家族は当然暖かく迎え入れてくれる」と思っていたら大間違い。家族の視線は冷たくお客様扱い。11歳で亡くなった双子で長男のハムネットへの思いを言えば言うほど、娘の反発は凄まじい。「お父さんは勝手だ、何も分かってない!」。孤独感でいっぱい、思い出にすがりつく燃え尽き症候群かもしれない。

 シェイクスピアさん、戯曲では「なんで全てを知っているんですか?」と質問されるほど完璧だが、家族の事は何も知らない。指摘は恐ろしいほど鋭くて辛い。お父さんタジタジだが、これは悲劇というより喜劇だ。

 映画は「どんなに長い夜も、必ず明ける。」(マクベスより)の如く、家族の絆を取り戻して終わる。「終わりよければすべてよし」だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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