岐阜新聞 映画部

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三角関係が崩れたあとのすれ違いの恋愛劇

2020年07月21日

弥生、三月 -君を愛した30年-

©2020「弥生、三月」製作委員会

【出演】波瑠、成田凌、杉咲花、岡田健史、小澤征悦/黒木瞳
【脚本・監督】遊川和彦

残酷な時の流れと狂い出す運命の歯車

 高校生の3人。弥生(波瑠)と太郎(成田凌)は幼なじみ。戯れ合うふたりを眩しそうに見つめるのはサクラ(杉咲花)。3人は親友と呼べる関係になるが、高校生活の最後、サクラの不在が弥生と太郎の関係にも微妙な揺らぎを与える。

 『弥生、三月 -君を愛した30年-』は、弥生と太郎がたどる30年の時間を、3月の1日だけにスポットを当てて描く恋愛ドラマである。

 監督、脚本の遊川和彦は80年代後半からテレビドラマの脚本家として活躍している。「女王の教室」や「GTO」といった学園ものでヒット作を手掛けたが、最も注目を集めたのは2011年の「家政婦のミタ」だろう。極端な個性を持つ主人公たちは、強い行動力で信念を貫く。特異なという形容が当てはまる独自のドラマづくりを展開した。最近でも、「過保護のカホコ」(17)「ハケン占い師アタル」(19)「同期のサクラ」(19)と、その個性は変わることなく、強烈なキャラクターのヒロインを想像し続けている。「ハケン占い師アタル」では演出にも参加しているが、映画は『恋妻家宮本』(17)以来、2本目の監督脚本作品となる。

 本作では、特異なキャラクターは登場しない。弥生と太郎の気持ちのすれ違いは純愛ドラマによくある設定で、三角関係の一角であるサクラの喪失が、残されたふたりの関係にも大きな影響を与える。

 別々の道を歩き始めた弥生と太郎は、それぞれの人生で夢破れ、時に、望まない進路変更を選択しなければならなくなる。東日本大震災、最愛の人との別れ…繰り返し訪れる春は、サクラのことを思い出させ、悔恨と諦念の感情を呼び覚ます。

 設定に縛られたツケかも知れないが、ふたりのすれ違いにはいくつかの無理が生じ、感情の機微も点描になり深みが足りない気がする。高校生を演じるのは許容するとしても、30年の時を経てそれ相応に老けていくという、最低限のリアリティはあって然るべきではなかっただろうか。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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